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第37話  霧の支配者

突如現れた謎の男と、彼が操る異形の魔物たち。

呪霧によって徐々に魔力を奪われる中、蓮たちは必死に抵抗する。

しかし、男の力は想像以上に強大だった――。

「……さあ、楽しませてもらおうか」


黒いマントを纏った男が、薄ら笑いを浮かべながらそう呟いた。

その瞬間、霧の中からさらなる魔物たちが這い出してくる。


異形の獣、無数の瞳が蠢く蛇、ねじれた腕を持つ影のような怪物――。

どれも禍々しく、ただの魔物ではないことが明白だった。


「チッ……厄介なことになったな」


シャムが短剣を構え、じりじりと後退する。


「リーナ、結界を張れるか?」


「試してみる!」


リーナが杖を掲げ、神聖魔法を発動しようとする。

しかし、霧の影響で魔力の流れが乱され、上手く術が発動できない。


「……ダメ、霧の影響が強すぎる」


「なら、こっちでぶち破るしかないな!」


蓮は素早く構え、《フレア・ストーム》を発動する。

爆炎が巻き上がり、周囲の霧を吹き飛ばすが――


「無駄だ」


男が指を弾くと、新たな霧が瞬く間に広がり、再び視界を遮った。


「……っ!」


「この霧は、ただの魔法では払えん。貴様らの力を削り取る"呪霧"だ」


男はゆっくりと歩み寄る。


「お前……何者だ?」


蓮が問いかけると、男はふっと笑った。


「"霧の支配者"――いや、それは少し大げさか……。私の名はカース。"呪い"を司る者よ」


カースは黒い霧を操り、さらなる魔物たちを呼び出す。


「異世界人よ、貴様の力……見せてもらおうか」



「くそっ、こいつは相当ヤバいぞ……」


シャムが焦りを滲ませながら、魔物たちを迎え撃つ。


「ならば、私の力を見せてやる!」


イリスが前に出ると、その身体から白銀の光が溢れた。


「《竜の咆哮》!」


轟音が鳴り響き、霧を吹き飛ばすと同時に魔物たちを弾き飛ばす。


「……ほう、やはり竜の力か」


カースは興味深そうに目を細める。


「だが、それでもこの霧を完全には払えん」


彼が手を振るうと、呪霧がさらに濃くなり、蓮たちの身体にまとわりつく。


「っ……重い……!」


蓮は体の感覚が鈍るのを感じた。

まるで何かが身体に纏わりつき、力を吸い取られるような感覚。


「この霧は"呪詛"そのもの。貴様らの力を蝕み、やがて命を奪う」


カースは不敵な笑みを浮かべた。


「……ならば、こちらも本気を出すしかないな」


蓮は魔力を練り上げ、周囲に防御結界を張る。


「シャム、リーナ、イリス! 一気に攻めるぞ!」


「了解!」


「ええ!」


三人が同時に攻撃を仕掛ける。


蓮は《フレア・バースト》を放ち、前方の魔物を焼き払う。

シャムは超高速の動きで敵を翻弄し、急所を突く。

リーナは神聖魔法で呪霧を浄化し、戦場の影響を抑える。


そして――


「《蒼雷の槍》!」


イリスが天へ向かって吠えると、上空から蒼白い雷撃が降り注いだ。

霧が一瞬にして晴れ渡り、カースの周囲の魔物が消し飛ぶ。


「……ほう、やるな」


カースは苦笑いを浮かべた。


「しかし、まだ終わりではない」


彼が腕を上げると、霧の中から新たな魔物が出現する。


「……これは」


蓮たちが目を見張る。


それは、これまでの魔物とは明らかに異なる存在だった。


巨大な影、赤く光る瞳――

それはまるで"霧そのもの"が具現化したかのような異形の怪物だった。


「"呪霧の獣"……こいつが貴様らの相手だ」


カースがそう言うと、獣が低く唸り声を上げた。



「……まずいな、こいつは」


シャムが歯を食いしばる。


「この魔物は霧と一体化している……普通の攻撃は通じにくいぞ」


イリスが分析する。


「ならば、霧ごと消し飛ばすしかないな」


蓮は深く息を吸い込み、全身の魔力を解放する。


「……一か八か、やってみるか」


彼は両手を掲げ、大気中の魔力を集め始めた。


「蓮……?」


リーナが心配そうに見つめる。


「やるしかない。俺たちの力で、この呪霧を消し去る!」


《焔雷・極光》――


炎と雷を同時に操る、蓮の全力魔法。


「行くぞ――!」


放たれた光が、霧を貫いた。


カースが微笑む。


「なるほど……面白い」


その声とともに、爆風が戦場を飲み込んだ――。

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