表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/201

第36話  動き出す影

蓮とイリスが盟約を交わした夜――その影で、蠢く者たちがいた。

魔の森の異変を察知し、密かに調査を進めていた者たち。

そして、蓮の動向を追う"敵"もまた、静かに牙を研いでいた。

夜の魔の森は、昼とは異なる顔を見せる。

冷たい霧が漂い、獣の遠吠えがどこかで響く。


そんな中、蓮たちは焚き火を囲んでいた。


「ふぅ……やっと落ち着いたな」


蓮は火を見つめながら、今日の出来事を振り返る。

イリスとの盟約を交わし、正式な仲間として迎えたこと。


「これで、魔の森の異変の原因を解決できる可能性が高くなったな」


シャムが腕を組みながら呟く。


「そうだな。イリスの力があれば、この森の拡張を食い止める方法が見つかるかもしれない」


リーナも頷く。


イリス自身は、焚き火の向こうで静かに座っていた。

盟約を交わしたことで、蓮と彼女は言葉を交わさずとも、ある程度お互いの感情を察することができるようになった。


「お前は何か感じるか?」


蓮が問いかけると、イリスはわずかに瞳を伏せた。


「……この森の奥、何かが目覚めようとしている」


「目覚める?」


「今はまだ微弱な気配だ。だが、確実に強くなってきている。森が拡張を続けているのも、それと無関係ではあるまい」


イリスの言葉に、シャムとリーナも表情を引き締める。


「……つまり、急ぐ必要があるってことか」


「その通りだ。遅れれば遅れるほど、事態は悪化する」


イリスは焚き火を見つめながら言った。


蓮は改めて、これからの行動を慎重に考えなければならないと自覚した。



その頃――


森の奥深く、霧に包まれた場所に、一つの影が佇んでいた。


「ふむ……やはり、誰かが動いているようだな」


漆黒のマントを纏った男が、小さく呟く。


「異世界人……か」


彼は手元の水晶を覗き込む。そこには、蓮たちの姿が映っていた。


「なるほど。確かに強いな。だが、こちらもただ見ているわけにはいかん」


男は静かに指を動かし、水晶に魔力を込める。


「そろそろ、貴様らにも"挨拶"をしてやるとしようか」


その言葉とともに、男の周囲に不気味な黒い霧が立ち上る。

まるで、何かが"目覚める"かのように――。



蓮たちが眠りについた頃、異変は起こった。


「っ……!」


蓮は突然、体が引き裂かれるような痛みを感じ、目を覚ました。


「な、なんだ……?」


息を整えながら周囲を見渡す。


そこには――黒い霧が広がっていた。


「っ! みんな、起きろ!」


蓮の声で、シャムとリーナも飛び起きる。


「な、何だこの霧……?」


「……まずいな」


イリスが静かに呟く。


「これはただの霧ではない。魔力を帯びた"呪霧"だ」


「呪霧……?」


「この霧を吸えば、徐々に魔力を奪われ、衰弱していく」


イリスがそう言った瞬間――


霧の中から、いくつもの赤い光が浮かび上がった。


「敵か……!」


蓮はすぐに構える。


霧の中から現れたのは、異形の魔物たちだった。

狼のような体に人間の腕を持つもの、蛇のような体に無数の眼を持つもの――


「これは……ただの魔物じゃない」


シャムが警戒しながら言う。


「そうだな……誰かが操っている?」


蓮はすぐに魔力を集中させる。


「シャム、リーナ、イリス! 迎撃するぞ!」


「了解!」


「ええ!」


「ふん、私の力、見せてやろう!」


戦闘が始まる――。


蓮はすぐに火属性の魔法を展開し、呪霧を払いながら魔物たちを焼き払う。


「《フレア・ストーム》!」


爆炎が巻き起こり、魔物たちが悲鳴を上げる。


シャムも短剣を手にし、俊敏な動きで魔物の隙を突く。


リーナは神聖魔法を使い、呪霧の影響を打ち消す。


そして――


「ふん、私の出番だな」


イリスが一歩前に出ると、その身体から白銀の光が溢れ出した。


「《竜の咆哮》!」


その一声で、霧が一気に吹き飛び、魔物たちが怯えたように後ずさる。


「……おもしろい」


その時、霧の奥から、声が聞こえた。


「やはり、貴様らはただの旅人ではないな」


蓮たちは一斉に警戒を強める。


霧の中から現れたのは――黒いマントを纏った男だった。


「……誰だ」


蓮が問いかけると、男は微笑した。


「私は……ただの影に過ぎん」


男の手には、黒い魔力が渦巻いていた。


「だが、貴様らにとっては"敵"であることに違いはない」


男はそう言うと、指を弾く。


すると、霧の奥からさらなる魔物が姿を現した。


「さあ、楽しませてもらおうか」


こうして、蓮たちは新たな脅威と対峙することとなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ