表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/201

第35話  盟約の証

白銀の古代竜・イリスが蓮たちの仲間となることを決意した。だが、彼女は「盟約」を交わすことで、正式に蓮の守護者となるという。

それは、ただの誓いではなく、魂をも結ぶ契約――。

その儀式のため、蓮はイリスの真意に向き合うことになる。

「盟約、か……」


イリスの言葉を受け、蓮は静かに呟いた。


目の前の白銀の髪を持つ美しい少女――いや、千年以上を生きた古代竜が、真剣な瞳でこちらを見据えている。


「……それって、具体的にはどういうことなんだ?」


イリスは微笑し、わずかに顎を上げた。


「簡単なことだ。私はお前の守護者となり、お前が歩む道を共にする。その代わり、お前は私を受け入れ、我が存在を保証する」


「受け入れる、ね……」


蓮は言葉を選びながら、彼女の真意を探った。


「それって、契約とか誓約のようなものか?」


「そうだ。だが、普通の契約とは異なる。これは"魂の盟約"――私たちの魔力と存在を繋ぎ、お互いを認め合う証となる」


「魂の盟約……」


蓮がその言葉を反芻していると、横で話を聞いていたシャムが口を挟んだ。


「待て、魂を繋ぐって、そんな簡単なことじゃないだろう? 何かリスクがあるんじゃないのか?」


イリスは静かに頷いた。


「もちろんだ。もし盟約を交わした者のどちらかが死ねば、もう片方も無傷では済まぬ」


「……っ!」


リーナが息を呑む。


「つまり、蓮が死ねば、イリスもただでは済まないってこと?」


「ああ。もっとも、私は竜だ。お前たちよりはるかに強靭な肉体と魔力を持つ。だが、それでも繋がりを持つということは、一定の影響を受けることになる」


イリスは淡々と語ったが、その瞳には確かな覚悟が宿っていた。


「……お前は、それでもいいのか?」


蓮はまっすぐに彼女の目を見た。


イリスは微笑し、ゆっくりと頷いた。


「私はお前に興味を持った。そして、共に歩む価値があると判断した。ならば、迷う理由はない」


「……そうか」


蓮は少し考え、息を吐いた。


「なら、俺も受け入れるよ。イリス、俺と盟約を結ぼう」


その言葉に、イリスは満足げに微笑んだ。



「盟約の儀式は、ここで行う」


イリスはそう言いながら、遺跡の中央へと向かった。


そこには、古びた魔法陣が刻まれている石碑があった。


「この地は、かつて私が封印された場所……そして、かつて盟約を交わした者がいた場所でもある」


「盟約を交わした者……?」


蓮が尋ねると、イリスはわずかに視線を落とした。


「もう千年以上前の話だがな。その者は、私を"対等な仲間"として迎えた……」


「……そうか」


蓮はそれ以上は聞かず、静かに魔法陣の中心に立った。


イリスも向かい合うように立ち、両手を広げた。


「では、始めるぞ」


その瞬間――


魔法陣が淡い光を放ち、空間が歪んだ。


蓮の体が軽くなり、意識がどこか遠くへ引き込まれるような感覚が走る。


(これは……)


意識が霞み、気づくと蓮はどこか別の空間に立っていた。


周囲は真っ白な世界。


そこに、イリスがいた。


彼女の姿は変わらず美しいが、どこか神聖な雰囲気をまとっている。


「ここは?」


「魂の境界――お前と私が繋がるための場所だ」


イリスは手を差し出した。


「この手を取れ。そうすれば、私たちは正式に繋がる」


蓮は一瞬だけ躊躇した。


だが、すぐに覚悟を決め、彼女の手を握った。


その瞬間――


眩い光が周囲を包み込み、蓮の体に熱が流れ込んでくる。


同時に、イリスの存在が、自分の中に深く刻まれるのを感じた。


(これは……)


言葉では説明できない。


だが、確かに"繋がった"のだと理解できた。



光が収まると、蓮は元の世界に戻っていた。


「……終わったのか?」


自分の手を見ると、手の甲に銀色の紋章が浮かんでいる。


「それが盟約の証だ。私とお前の魂が繋がった証でもある」


イリスも同じ紋章を手の甲に宿していた。


「ふぅ……なんだか、すごい体験だったな」


蓮が息を整えていると、シャムが呆れたように言った。


「お前、すごいことをさらっと受け入れすぎだろ……」


「まぁ、そうかもな」


蓮は苦笑した。


リーナは少し考え込んだ後、静かに微笑んだ。


「でも、これでまた、一歩前へ進めた気がする」


「……ああ、そうだな」


蓮は拳を握りしめ、改めて決意を固めた。


「これからもよろしくな、イリス」


「ふっ、当然だ。お前が歩む道、私も共に行こう」


こうして――


蓮とイリスは、正式な仲間となった。


それは、ただの契約ではない。


互いの魂を結びつけた、真の盟約だった。


そして、この絆が、これからの戦いにおいて大きな力となることを、蓮はまだ知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ