表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/201

第32話  解放されし者

蓮たちは影との激闘を繰り広げるが、相手は異次元の動きと強大な力で攻撃を封じてくる。戦いの中で、封印の鍵となる真実に辿り着いた蓮たちは、ついに決断の時を迎える。だが、封印が解かれる瞬間、想像を超えた存在が姿を現す――。

闇の中を切り裂くように蓮は剣を振るった。だが、相手の姿はまたしても消え、どこかへと瞬時に移動する。


「クソッ……!」


蓮は奥歯を噛みしめながら、素早く態勢を立て直す。この影は単なる魔物ではない。物理攻撃すらも捉えられず、リーナの魔法も通じない。まるでこの空間そのものと同化しているかのような存在だった。


「このままじゃ埒が明かない!」


シャムが短剣を握りしめながら後退する。リーナもまた、苦悶の表情を浮かべながら次の手を考えていた。


「……蓮、何か策はある?」


「封印の真実を知るしかない。それが、こいつを打ち破る鍵になるはずだ。」


蓮は遺跡の奥へと視線を向ける。そこには、まだ触れられていない巨大な魔法陣が浮かび上がっていた。中心には紋章のような模様が刻まれ、わずかに光を放っている。


「なるほど……つまり、あの封印を解くことが突破口になるかもしれないのね?」


リーナが魔法陣を見つめながら呟いた。


「だが、その封印が敵にとって都合が悪いのかどうかは分からない。」


「試すしかねえな。」


シャムが一歩前に出る。しかし、その瞬間、影が再び襲いかかった。今度は一切の予兆なく、まるで虚空から生まれたかのようにシャムの背後に現れる。


「シャム! 伏せろ!」


蓮が叫ぶと、シャムはとっさに身を低くし、寸前で闇の爪が彼の頭上をかすめた。だが、そのまま影は次の標的として蓮に狙いを定める。


「……避けられない!」


蓮は即座に判断し、全属性魔法の力を解放する。


「《聖なる光》!」


黄金色の光が蓮の周囲を覆い、闇の爪と激突する。影は一瞬たじろぎながらも、なおも迫ってくる。


「効いている……が、決定打にはならないか。」


影は一度距離を取ると、静かに周囲の闇を濃くしていく。そして、次の瞬間、言葉を発した。


「……解いてはならぬ。その封印は、かつての過ちを封じるもの。」


「……過ち?」


蓮が問いかけると、影はわずかに形を揺らした。


「封印されし者は、かつて世界を破滅へと導いた存在……その災いを解くことは、新たな滅びを生む。」


その言葉に、蓮たちは一瞬動きを止める。しかし、次にリーナが声を上げた。


「ならば、私たちがそれを止めるわ! ただ怯えて封印し続けることが正解とは限らない!」


「……ならば、試してみよ。」


影はそう言うと、再び襲いかかってきた。しかし、蓮は迷いを断ち切るように叫んだ。


「リーナ、シャム! 魔法陣を解放する!」


リーナが魔法陣に手をかざす。途端に陣は眩い光を放ち、封印が解かれ始めた。


「……時が来たか。」


影が静かに呟いた瞬間、遺跡全体が振動した。そして、封印が完全に解けた時――。


轟音とともに、遺跡の中心から巨大な魔力が解放された。


その中から現れたのは――美しい女性の姿をした巨大な竜だった。長い白銀の髪を持ち、深紅の瞳が蓮たちを見下ろしていた。


いや、それは確かに女性ではあるが、竜であることを疑わせないほどの存在感を蓮たちに与えていた。


「……私を、解放したのは……お前たちか?」


その声は、どこか哀しげでありながら、確かに誇り高い響きを持っていた。


「まさか……これが、封印されていた存在?」


蓮が驚きの声を漏らす。


「封印の解除と共に現れる敵がいると予想していたが……まさか、こんな存在だったとはな。」


シャムが短剣を下ろし、慎重に様子を伺う。


すると、影がその竜の前に跪くように姿を変え、静かに言葉を紡いだ。


「……貴方が、目覚めたことで、私は役目を終える。」


影は次第に薄れ、やがて消えていく。その姿を見届けた竜は、悲しそうに目を閉じた。


「……長き時を経ても、まだ世界は私を恐れているのか。」


「……あなたは何者なんだ?」


蓮の問いに、竜は目を開けた。その瞳には、人間には理解できぬほどの深い感情が宿っていた。


「私は、かつて世界を滅ぼしかけた者。そして、今は……お前たちに試される者。」


彼女の言葉は、蓮たちの胸に重く響いた。


封印を解いたことで何が変わるのか。今後、どのような未来が待ち受けるのか。


蓮はその答えを知るために、竜と向き合う覚悟を決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ