第31話 滅びの先に
蓮たちはさらなる試練を乗り越え、封印の真実へと近づく。しかし、新たな力を持つ敵が立ちはだかり、これまでの戦いとは異なる脅威が迫る。蓮たちは一丸となって、その力を打破しなければならない。
遺跡の最深部に辿り着いた蓮たちは、さらに強大な敵の気配を感じ取っていた。見上げると、岩肌に刻まれた古代の文字が不規則に光り始め、そこから一筋の光が天井に突き刺さるように放たれていった。
「これが、封印が解ける瞬間か……」
蓮は深く息を吸い、目を閉じる。どこかしら、不安が胸を締めつける。封印を解くということは、それと同時に何かが解き放たれるということだ。蓮はその予感を否定できなかった。
リーナが隣に立ち、冷静に周囲を警戒しながら言った。
「少なくとも、ここまで来てしまった以上、引き返すわけにはいかないわね。」
「その通りだ。だが、気を付けろ。これからはただの試練ではなく、真実そのものと向き合うことになる。」
蓮は言いながら、手を無意識に剣にかけた。すでにこれまでの戦いで得た経験が、彼に新たな感覚を与えていた。だが、それと同時に危険を感じ取る能力も高まっていた。
その時、突然、地面が揺れた。まるで地鳴りのような音が響き、蓮たちは一瞬、足元を取られそうになった。しかし、それ以上の揺れはすぐに収まり、代わりに冷たい風が遺跡内を吹き抜けた。
「何か来る……!」
シャムが警戒し、身構えた。その瞬間、遺跡の深部から、暗闇の中に目を凝らすと、巨大な影が浮かび上がるのが見えた。それは、先ほどの魔物とは異なり、まるで人の形をしていたが、細部が異次元的で不安定なものに見えた。
「何だ、あれは?」
リーナが言葉を失っている間、蓮はその存在を鋭く観察していた。その影は、どこかしら優雅に動くが、同時にその存在感が圧倒的に強い。まるで何もかもを支配するかのような、異次元的な力を感じさせる。
「――お前たち、封印された者たちの最期を見届けよ。」
影が低く、低い声で告げると、その言葉は蓮たちの胸に重く響いた。まるでそれが、この場所での最後の試練であるかのように。
「お前たちが目指す『真実』に辿り着くことは許さぬ。」
その言葉が発せられると同時に、影が動き出した。光の速度で迫るその存在に、蓮たちは一斉に反応した。
「来たか!」
蓮が声を上げると、同時にシャムが飛び出し、素早く短剣を構えて前進する。リーナも呪文を準備し、魔法を放つ準備を整えていた。
「――《雷撃》!」
リーナの声とともに、雷のような魔力が渦巻く。しかし、暗闇の影はそれをまるで無視するかのように、雷撃を吸収しながら進み続ける。
「この――!」
蓮はその姿勢を見逃さず、剣を一閃させた。しかし、相手の姿が光の中で消え去るように、その一撃は空を切る。
「何だ、あの動きは……!」
蓮はその反応速度に驚きながら、すぐに再度攻撃に移った。しかし、今度は相手が予想を超えて、奇妙な動きで跳ね返してきた。影が急激に姿勢を変え、蓮の攻撃をかわす。
「こいつ……普通の相手じゃないな。」
蓮は冷静にその存在を分析する。普通ならば、直線的な攻撃でその隙を突くことができるが、この敵はそれを見越しているかのように、反応が異次元的である。
「シャム、リーナ、距離を取れ!」
蓮が叫ぶと、シャムとリーナは一度後退し、それぞれが新たな作戦を立てるように動いた。しかし、影はその隙を逃さず、再び動き出し、蓮たちの周囲に闇を広げていった。
「――《闇の浸食》!」
影の声と共に、周囲の空間が歪み、闇がその場を覆い尽くし始めた。その闇に触れると、蓮たちの体力が削られるような感覚を覚え、瞬時に体が重く感じる。
「くっ……!」
「これでは戦えない!」
リーナが叫んだ。闇の中では魔法もまともに発動できない。どうにかして、影を倒す方法を見つけなければならない。
その時、蓮の中である閃きが生まれた。
「――封印の真実。」
蓮はつぶやきながら、ふと遺跡の深部に目を向けた。何かが、そこに待ち受けている。暗闇の中、蓮は一筋の希望を感じ取った。おそらく、この敵を倒すには、封印されたものを知る必要がある。
「リーナ、シャム、俺に続け!」
蓮は全力で前進し、影の中に切り込んでいく。希望を信じ、そして未来を切り開くために。




