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第30話  封印された記憶の扉

蓮たちは「封印の真実」を知るため、過去の魔術師たちの遺した遺跡へと足を踏み入れる。そこで目の前に現れるのは、かつての召喚者たちの記憶を守る者たちだった。彼らの言葉が、すべてを変える。

蓮たちが異世界の深層に足を踏み入れてから、時間がどれだけ経ったのかはわからなかった。周囲の空気が異常に重く、雲はますます暗く、無数の石柱が圧倒的な威圧感を放っている。その中を進んでいくと、突如として一際大きな扉が現れた。扉には深い刻印が施されており、触れるだけでそれが蓮たちに何かを語りかけてくるような気がした。


「ここだ……」


蓮は静かに呟く。リーナも無言でその扉に視線を送った。


「進んでみよう」


シャムの言葉に促され、蓮は一歩踏み出す。まるで承認を求めるように、手を差し伸べたその瞬間、扉が静かに開かれた。


扉の向こうには、まるで別の世界が広がっていた。薄暗い空間に、幾つもの浮遊する石碑が並べられている。それぞれには古代の文字が刻まれ、蓮の目にはその意味が読み取れなかった。しかし、なぜか心の中で、その文字が意味するものが少しずつ理解できるような感覚が芽生えてきた。


「ここは……」


リーナが息を呑んだ。彼女もこの空間に何かを感じ取っているようだ。


「過去の召喚者たちの記憶が保管されている場所だ」


蓮が静かに言った。その言葉を耳にしたシャムが、少し間を置いてから口を開く。


「記憶?」


「そうだ。封印された者たちの記憶がここに眠っている。彼らが歩んだ道、そしてその末路が、すべてここに刻まれているはずだ」


蓮の言葉に、リーナは不安げに眉をひそめた。


「それが、真実に繋がるのか?」


「恐らくな。でも、これを知ることで、全てが変わることになるかもしれない」


静かな空間に響くのは、足音だけだ。蓮たちは慎重に進み、石碑に近づいていった。その瞬間、いくつかの石碑から淡い光が放たれ、蓮たちの周囲を包み込んだ。光は次第に強くなり、ついには全ての石碑が光を放つ。その光が収束し、一つの形となり、目の前に現れた。


その形は、ひとりの人影だった。蓮たちの目の前に、現れたのはかつて召喚された者たちの一人だった。だが、その者は蓮たちと違い、穏やかな表情を浮かべていた。


「お前たちか、私の後継者たちか」


その者が口を開いた。


「後継者?」


蓮はその言葉に驚く。しかし、質問する暇もなく、相手は続けて語り始めた。


「私はかつて召喚された者だ。そして、私は私の使命を果たすことができなかった。しかし、私の記憶はこの場所に封印され、後の者たちに伝えられることを望んでいた。お前たちが来たことで、その望みが果たされるのだろう」


その者の声には、どこか切なさが込められていた。


「お前も、私たちのように召喚されたのか?」


シャムが静かに問う。


「そうだ。しかし、私の召喚は失敗だった。私たちのような存在が、異世界で果たすべき使命を与えられたはずだ。だが、私の召喚者は私を兵器として扱い、私の命を握ることで権力を手に入れようとした。私はそのことに耐えられず、最終的には封印されることになった」


その者は少しだけ目を閉じ、過去を思い出すように言葉を続けた。


「だが、私の経験が意味を持つと信じている。お前たちが、この世界をどうするかは、お前たち次第だ。しかし、覚えておけ。お前たちがこれから進む道は、すでに決まっているのだ」


その言葉に、蓮は思わず立ち止まった。


「決まっている?」


「そうだ。この世界の封印は、単なる物理的なものではない。封印された記憶は、お前たちの運命を決定づける。お前たちは、この世界を変えるために召喚されたのだ」


その者は、目を開けると蓮たちを見つめながら言った。


「だが、覚悟を決めなければならない。封印された記憶が明らかになることで、すべてが変わる。しかし、それを受け入れられる者だけが、真実に触れることができるのだ」


その者の言葉に、蓮の胸は重くなった。リーナもシャムも、その言葉に耳を傾けていた。しかし、真実に触れることが、必ずしも良い結果を招くとは限らない。蓮たちが進むべき道は、全てが未知であり、恐れと共に歩むことを強いられるのだろう。


その時、石碑の一つがひび割れ、裂け目が広がり始めた。そこから、さらに多くの光が漏れ出し、その光がまるで蓮たちを試すかのように舞い上がった。


「もう後戻りはできない」


蓮はその言葉を呟き、決意を固めた。リーナとシャムも無言で頷く。


「さあ、進もう。これが、俺たちの選んだ道だ」


蓮の声は力強く響き、その場に立つ者たちの心を奮い立たせた。


その先に待っているものが何であれ、蓮たちはもう一歩を踏み出すしかなかった。

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