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第23話  封印の崩壊

村の地下神殿で蓮たちは、封印されし「闇の王」の残滓と対峙する。暴走する魔力が村全体を呑み込もうとする中、リーナは魔術陣の核を探し、封印を修復しようとする。だが、闇の王は蓮たちの力を吸収し、完全復活を目論んでいた。果たして、蓮たちは封印を維持し、村を救うことができるのか——?

「リーナ、魔術陣の核は見つかりそうか?」


蓮は剣を構えたまま、歪む空間の中で叫んだ。周囲の魔力は激しく渦巻き、神殿全体がきしむような音を立てている。


「……まだ! でも、魔力の流れから察するに、封印の核はあの魔術陣の中心部にあるはずよ!」


リーナは封印の紋様を凝視し、両手を地面に当てながら魔力を込める。だが、周囲の魔力があまりにも強すぎるため、制御するのは容易ではなかった。


「ちっ……そんなに悠長にやってられねぇんだよ!」


シャムが焦りを滲ませながら、漆黒の影へと剣を振るう。しかし、刃は空を切り、影の中に呑み込まれるようにして消えた。


「無駄だ……貴様らの力は、我が糧となる……」


影はゆっくりと形を変え、巨大な腕を伸ばしてきた。その先端には、ねじれた魔法の紋様が刻まれた黒い鎖が絡みついている。


「こいつ……俺たちの魔力を吸収しようとしてるのか!?」


蓮は瞬時に察し、咄嗟にアイテムボックスから防御結界を発動する魔導具を取り出した。


「《魔障結界》!」


光の壁が展開され、影の腕がそれに触れると、一瞬だが動きを鈍らせた。


「今だ、シャム!」


「おう!」


シャムはその隙を突き、足元の魔力を蹴り飛ばして跳躍すると、影の頭部へと一直線に突き進む。そして、力を込めた一撃を叩き込んだ。


「喰らえっ!」


剣が影の中心部を貫き、一瞬、空間が震えた。だが——


「……甘いな」


影は傷つくどころか、シャムの剣ごと呑み込もうとする。


「なっ……!?」


「シャム、離れろ!」


蓮は素早く動き、彼の腕を掴んで引き戻す。寸でのところで影の呪縛から逃れることができたが、シャムの剣は影の中へと消えてしまった。


「クソッ、やっぱりこいつ、普通の攻撃は効かねぇ!」


「蓮、聞いて! 影の魔力の流れを見てたけど、どうやら封印の核と直結してるわ!」


リーナの声が響く。


「つまり、核を破壊すれば、こいつも消えるってことか?」


「違うわ! 逆よ! 核を破壊すれば封印が完全に解けて、こいつが完全復活する!」


「……それはマズいな」


蓮は冷静に状況を整理する。


「じゃあ、核を封印し直せばいいんだな?」


「でも、核は影の魔力に侵食されてる……今の状態では封印を維持することも難しいわ」


リーナの言葉に、蓮は考えを巡らせた。そして——


「なら、俺が魔力を流し込んで、一時的に封印を安定させる。それでいけるか?」


「えっ……!? でも、それじゃあ蓮が……!」


「心配するな。俺の魔力量なら、少しくらい影に吸われても大丈夫だ」


蓮は自分の手を見つめる。異世界に来てから、数多くの戦いを経験し、力を得てきた。それを今、村を救うために使うべき時だ。


「シャム、リーナ。俺が封印の核に魔力を流し込むから、その間、こいつを押さえてくれ」


「無茶なこと言うなよ……って言いたいとこだが、やるしかねぇか」


「……分かったわ。全力でサポートする!」


二人の返事を聞き、蓮は封印の中心部へと向かった。


——その瞬間、世界が揺れた。


「グオオオオオオオオオオオ!!!」


影が咆哮し、神殿全体が振動する。封印が崩れかけている証拠だった。


「間に合え……!」


蓮は両手を封印の核に当て、全力で魔力を注ぎ込んだ。


「《封魔の刻印》——!!!」


光が弾け、封印の紋様が強く輝く。影が苦しむように身をよじり、その姿が徐々に薄れ始めた。


「よし、効いてる……! このまま……!」


だが、その時だった。


「……そう上手くいくかな?」


影が最後の力を振り絞り、蓮の魔力を逆流させようとする。


「ぐっ……!」


強烈な魔力の奔流が蓮を襲う。身体が痺れ、意識が遠のきかける。しかし——


「蓮!!」


シャムが影の腕を斬り裂き、リーナが魔法の防壁を展開して蓮を守る。


「今よ、蓮! 最後の魔力を注ぎ込んで!」


「……わかった!」


蓮は渾身の力を込め、魔力を解放する。


「《封魔結界、発動!!》」


空間が揺れ、封印の紋様が完全に光り輝いた。


「グオオオオオオオオ!!」


影が叫び、そして——


闇の王の残滓は、完全に封印された。


——静寂が訪れた。


蓮は深く息をつき、その場に膝をついた。


「……やった、のか?」


「ああ、封印は無事よ……村ももう大丈夫」


リーナが安堵の表情を浮かべる。シャムも剣を構えながら、肩をすくめた。


「ったく、無茶しやがる……でも、まあ……よくやったな」


「ありがとな、二人とも」


こうして、村の危機は去った。


しかし——


「……なあ、リーナ。あの影、最後に妙なことを言ってたよな?」


「ええ……『まだ終わらぬ』って」


それが意味するものとは——?


闇の王の残滓は封印されたが、すべてが終わったわけではなかった。


蓮たちは、さらなる試練が待ち受けていることを、まだ知らない——。

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