第22話 闇に沈む村
黒き魔術師を退けた蓮たちは、正気を取り戻した村人たちを救助しながら、村の異変の真相を探る。だが、村の地下には封印された禁忌の魔術陣があり、それが魔術師の力を増幅していたことが判明する。封印を完全に解く前に阻止しようとする蓮たちだったが、地下に残された魔力が暴走し、村全体を闇へと沈める危機が迫る。果たして、蓮たちはこの異変を止めることができるのか——?
「……村人たちは全員無事か?」
夜明けが近づく頃、蓮は戦いの余韻が残る村の広場で深く息をついた。倒れていた村人たちは正気を取り戻し、仲間たちの手当てを受けながら安堵の表情を浮かべている。
「みんな、意識は戻ってる。ただ、呪いの影響でしばらくは動けないみたいね」
リーナが治癒魔法を使いながら状況を報告する。
「無理もないな。あんな魔力に長時間さらされてたんだ、体がまともに動くはずがない」
シャムが剣を鞘に収めながら辺りを警戒していた。敵の気配はもうない。しかし、ただ勝っただけでは終わらない、そんな不穏な空気が村全体を包んでいた。
「蓮……さっきの戦いの中で感じた違和感、覚えてる?」
リーナが魔術師の消えた方角を見つめながら問いかける。
「ああ。あいつが最後に言った『この世界の理を覆す存在』って言葉か?」
「ううん、それもだけど……魔力の流れよ」
リーナは地面に手を当てながら、神妙な顔をする。
「村の地下に……何かがある」
その言葉に、シャムが顔をしかめた。
「……また厄介ごとか。ま、予想はしてたけどな」
「私も気になって村の中心付近を調べたの。そしたら……地面の下に強力な魔術陣が埋められてたのよ」
「魔術陣?」
蓮は驚きながらリーナを見た。
「ええ。おそらく、黒き魔術師の力があそこから供給されてたのよ」
「つまり……あいつを倒しても、まだ異変は終わってないってことか」
蓮はため息をついた。
「村人たちにはここで待機してもらおう。俺たちは地下に降りて、そいつを確かめる」
「賛成だ。どうせ放っておいてもロクなことにならないだろうしな」
「私も行くわ」
リーナも迷いなく頷いた。
こうして蓮たちは、村の奥にある朽ちかけた礼拝堂の地下へと足を踏み入れた——。
「……ここか」
礼拝堂の地下へと続く階段を降りると、そこには古びた石造りの神殿が広がっていた。壁や天井には無数の魔法陣が刻まれ、中央には巨大な封印の紋様が輝いていた。
「……これは、ただの魔術陣じゃない」
リーナが封印を見つめながら息をのむ。
「どういうことだ?」
「これは……"供物の魔術陣"よ」
「供物……?」
リーナはゆっくりと説明を続けた。
「この魔術陣は、定期的に生命を捧げることで維持されるもの……。でも、これは何かを"封じる"ためのものね」
「じゃあ、この村の異変は……」
「ええ。黒き魔術師が使ったのは、この魔術陣の力。彼は封印されている何かの力を利用して、自分の魔術を強化していたのよ」
「つまり、あいつが逃げた今、この封印が崩れる可能性があるってことか」
シャムが不機嫌そうに言う。
「その可能性は高いわ。この封印が完全に解ける前に、何が封じられているのか確認して、対処しないと……!」
リーナが魔力を込めて封印の解析を始めた。すると、魔術陣の中央が淡く輝き、何かの影が浮かび上がる。
「……これは……!」
蓮たちの目の前に現れたのは、巨大な漆黒の影だった。
「フフフ……よくぞ来た……異世界の者よ……」
不気味な声が神殿に響き渡る。
「お前は何者だ?」
蓮は剣を構えながら問いかける。
「我はかつてこの世界を支配しようとした者……封じられし闇の王……」
「……闇の王?」
「お前の力……この世界にはない異質なもの……興味深い……」
影はゆっくりと魔術陣の中でうごめく。
「お前がこの封印を解けば、我は完全に復活する……さあ、どうする?」
「誰がそんなことをするか」
蓮は冷静に言い放った。
「愚かな……だが、遅い……この封印は……すでに崩れかけている……」
すると、魔術陣が激しく光を放ち、周囲の空間が歪み始めた。
「くっ……これは……!」
リーナが魔術を強めようとするが、魔力の暴走が激しすぎる。
「やるしかねえな……!」
シャムが剣を抜き、蓮もそれに続いた。
「このまま放置すれば、村ごと呑み込まれる……!」
蓮は剣を握りしめ、決断した。
「リーナ、魔術陣の核を探せ! 俺とシャムで時間を稼ぐ!」
「分かったわ!」
そして、蓮とシャムは闇の王の残滓との決戦に挑む——!




