第21話 黒き魔術師との決戦
狂気に満ちた黒き魔術師が繰り出す呪詛と強化された村人たちに苦戦する蓮たち。だが、蓮は魔力の流れを見極め、敵の弱点を突くことで戦況を覆す。最後の一撃を放つとき、魔術師は驚愕の言葉を残して消える——。
「蓮、こいつら……動きが速くなってるぞ!」
シャムが叫びながら、黒い靄に包まれた村人たちを相手に応戦する。彼らは尋常ではない動きで襲いかかってきた。まるで人間ではなく、異形の存在になってしまったかのような動きだった。
「くそ……これがあいつの"祝福"ってわけか」
蓮は魔力感知を駆使しながら、敵の動きを見極めた。確かに、強化された村人たちは速く、力も格段に増している。しかし、その動きにはどこか違和感があった。
(……規則的だ)
村人たちの攻撃は素早く、力強い。しかし、それぞれが独自に動いているわけではなく、まるで見えない糸で操られているかのようだった。
「リーナ! 魔力の流れを追え! あいつら、単独で動いてるんじゃない!」
「分かったわ!」
リーナは即座に魔力感知の術を使い、敵の動きを分析する。そして——
「蓮! あの黒き魔術師の杖! あれが……彼らを操る中枢よ!」
「やっぱりな……!」
蓮は魔力を込めた剣を構えた。
「シャム、リーナ! 俺があの杖を壊す! その間、俺を援護してくれ!」
「任せろ!」
「了解!」
シャムとリーナが前衛と後衛で援護する形を取り、蓮は一気に魔術師へと迫った。
「フフフ……愚か者め。お前ごときが、この力を超えられるとでも?」
魔術師が不敵に笑い、杖を振るう。すると、村人たちがさらに狂暴化し、一斉に蓮へと襲いかかってきた。
「甘いな!」
蓮は素早くアイテムボックスから【雷撃の符】を取り出し、地面に叩きつける。
「《雷鳴の咆哮》!」
符から放たれた雷撃が村人たちの足元を駆け抜け、一瞬の隙を作り出した。
「今だ!」
蓮は雷撃の余韻を利用し、一気に魔術師へと間合いを詰めた。
「なにっ……!?」
驚愕する魔術師の表情を確認しながら、蓮は全力で剣を振るう。
「——《魔剣・閃光》!!」
蓮の剣が光を纏い、魔術師の杖へと直撃した。
「ぎゃあああっ!」
悲鳴とともに杖が砕け散る。その瞬間、村人たちの動きが止まり、一人、また一人と膝をついていった。
「よし……成功したか」
蓮は息を整えながら、魔術師を見据えた。
「貴様……なぜ……!? こんなはずでは……!」
魔術師は信じられないという表情で膝をついた。
「お前の魔術は強力だったが、根本の仕組みが分かれば対処は可能だ」
「ぐ……」
魔術師は歯を食いしばりながら、ゆっくりと立ち上がった。
「まだ……終わりではない……!」
そう言うと、彼の体から黒い靄が噴き出した。
「……逃げる気か!」
蓮が剣を構える。しかし、魔術師の体は闇に飲み込まれ、霧のように消えていった。
「……フフフ、お前に警告しておこう」
闇の中から、魔術師の声だけが響く。
「お前は……この世界の理を覆す存在だ……! それを……理解しておくがいい……!」
「どういう意味だ!?」
蓮が問いただすが、魔術師の声は霧散し、完全に消え去った。
「蓮……あいつ、何かを知ってるみたいね」
リーナが険しい顔をする。
「ああ……気になるが、今は村人たちの救助が先だ」
蓮は気を取り直し、倒れた村人たちへと駆け寄った。
「……助けてくれて、ありがとう……」
正気を取り戻した村人の一人が、涙ながらに蓮へと感謝を述べる。
「当然のことをしたまでさ」
蓮は微笑み、村人たちの回復に取り掛かった。
こうして、村を襲った黒き魔術師との戦いは終結した。しかし、彼の残した言葉が、蓮の心に小さな疑念を残したままだった——。




