第199話 創世の彼方
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蒼天を裂くような雷鳴が、崩壊しかけた世界の境界を揺るがす。
蓮たちが辿り着いたのは、現世と異界が交差する最深領域「万象律の塔」最上階。
そこは、時間と空間の理さえ歪み、あらゆる世界線の因果が縒り合わさる、まさに世界の〈始原点〉であった。
「……ここが、全ての根源か」
蓮は静かに呟き、前方に浮かぶ巨大な魔法陣——否、もはやそれは「神式回路」と呼ぶべきものだった——を見つめる。
その中心に立つ存在。
黒衣を纏った青年の姿。
しかし、その体から発せられる圧倒的な魔力と、虚空を裂くような存在感は、もはや人間の域を超えていた。
「来たか、蓮。貴様の選択が、全ての運命を決する」
声の主は、“神王”と呼ばれた元・帝国皇帝ルクト=カイロン。
異界の神と同化し、すべての世界を再構築しようとしている存在である。
「……違う。俺は“選ぶ”んじゃない。“創る”んだ、未来を」
蓮の眼に迷いはなかった。
神王との最終対話の中、蓮の周囲にはかつての仲間たち——イリス、リーナ、シャム、マリル、カイエン、ミスト、ネフェリス、ノア——が次々と転移魔法で集結していく。
「お前だけじゃない、蓮。この未来は、みんなで創る!」
リーナが叫び、聖剣を掲げる。
その光は闇を裂き、虚空を照らした。
そして——戦いが始まる。
万象律の塔・最終層 戦闘フィールド〈創世庭〉
この場において、魔法も技も因果律によって書き換えられる。
戦場そのものが“意志”によって変動する空間。
神王ルクトは空中に展開した因果式を操作し、異界から数百体の神性兵を召喚。
世界中の亡霊、記録、魔導因子を融合させた存在である。
「……こいつら、一体一体が災厄クラスの魔力を持ってる……!」
ミストが息を呑むが、イリスが巨大な竜体に変化し、咆哮一閃。百体近くの神性兵を一瞬で塵に変える。
「怯むな!これは創世の戦いだ!」
蓮は即座に無限アイテムボックスを展開。
中から“神域結晶核”を取り出し、仲間たちの魔力を倍加させる装置を起動させた。
「ここで使わなくて、いつ使う……!」
それはかつて、王都の最深部で手に入れた“神代の遺物”——いずれ世界再構築の鍵とされていたもの。
全員の魔力が共鳴し始め、蓮たちは“共鳴戦術陣形〈クロス・リンク・コンチェルト〉”を展開。
各自の役割が絶妙に組み合わされ、神王の軍勢を着実に押し返していく。
「……やるじゃないか、蓮。そして、彼らも」
神王は淡く微笑むと、自身の背後から“異界の神核”を取り出した。
「では次は、世界そのものを君たちにぶつけよう」
——《神式:終焉連環儀〈アポカリプス・コーデックス〉》、発動。
それはあらゆる次元、時間軸、存在の“終焉情報”を束ね、現実として具現化する究極魔法。
塔の外、世界のあらゆる地で地殻変動、重力崩壊、時空断裂が発生する。
「このままじゃ、本当に世界が……!」
その瞬間、蓮の無限アイテムボックスが異常共鳴を始める。
(……これは……!)
中から自動的に飛び出したのは、「創世因子」と呼ばれる結晶。
それは彼が旅の中で集め続けた、世界中の“希望のかけら”だった。
人々の願い。過去の王の遺志。滅びた村の祈り。仲間との絆。
——それらすべてが、今、蓮の中でひとつの意志となる。
「わかるよ、みんなの声が——!」
蓮は最後の力を振り絞り、《創世魔法:希望構文式〈ジェネシス・スクリプト〉》を発動。
それは世界の因果を書き換える、唯一神にも許されなかった魔法。
「終わらせない!誰一人、失わせない!!」
閃光が塔全体を包み、神王の終焉連環儀を無効化する。
彼の神性因子が解体され、かつての皇帝、ルクトとしての姿が戻っていく。
「……蓮、君は、もう僕を超えていたのか……」
「超えたんじゃない、共に行こう、ルクト」
蓮の手が差し出される。
そして——塔は崩壊し、世界は再構築されていった。
数週間後── 新帝都〈エリュシオン・ノヴァ〉
蓮はついに「蓮の国家」を建国した。
それは、あらゆる人種・種族・思想を受け入れる“世界融合連邦”として機能し始めていた。
仲間たちはそれぞれの役割を持って国家運営に参加。
イリスは天空防衛隊の長、リーナは政務統括官、シャムは外務戦略顧問に。
ルクトは顧問役として再び人々と向き合う道を選んだ。
蓮は王ではない。“導き手”として、新たな未来を見据えていた。
そして——
「蓮。次元干渉値が上昇してる。……何か来るかも」
ノアが警告を発し、空を見上げた。
遥か上空、裂け目が現れる。
蓮は剣を握りしめ、笑う。
「……面白い。まだ、終わりじゃないってことか」
次元の狭間に、何者かの影が揺れる。
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