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第192話  暁天の選定者

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

滅びを越え、再生を紡ぎながら歩んできた蓮たち一行。


かつて虚神〈アバーソン〉との戦いで断絶された因果を繋ぎ、新たなる星暦の道標として歩む彼らの旅は、今や神々が干渉すらできぬ“自由なる選択”の領域へと突入していた。


――それは、《神無き新時代》の黎明。


舞台は、浮遊群島〈エル・ラヴィエル〉の最果て、時空裂け目に囲まれた領域。


そこに存在する神秘の祭壇《天環の環座〈ゼロ・リミナリア〉》。


この祭壇は、神々によって封印された“選定の間”とも言われ、歴史上、存在そのものが一度も確定されたことのない謎の場であった。


だが蓮たちは、《星詠の神譜》に記された最後の断章「選定者の扉」に導かれる形で、ここへと辿り着いた。


「……ここが、その場所か」


蓮は深く息をつき、虚空に浮かぶ環状の遺構を見上げた。


一見、何もない空間。


しかし、空間そのものが光と影を揺らし、そこに存在することを“証明しない”という形で主張している。


「これは……干渉される前提を拒んでる空間だね」


ミストが、情報解析用の結晶端末を起動するも、即座に反応がシャットダウンされた。


「情報の“受容”すら弾く構造……これは、意識が意志を定めた者だけが通れる門というわけか」


カイエンが頷き、リーナが剣を携えながら一歩前に出る。


「行こう。ここを越えれば、私たちの未来に手が届く」


その瞬間、空間が音もなく反転した。


次の瞬間、蓮たちは全員、異なる次元に“選別された”。




――選定のゼロ・リミナリア内部。


そこは“己の本質と向き合う場”であり、蓮たちはそれぞれ、自らの記憶・選択・想いの深層に投げ込まれていた。




蓮の前に現れたのは、過去の“己”だった。


黒衣をまとい、無表情で、まるで可能性のひとつとして存在していたはずの“選ばなかった未来の蓮”。


「……お前は、何者だ」


「お前だよ。可能性に逃げ、運命を憎んだ、もうひとつの“もしもの俺”」


虚空に浮かぶ映像。


そこには、仲間を失い、世界を諦め、ただ一人で立ち尽くす蓮の姿があった。


「この未来も、確かにあった。だが、それを否定したのは、俺だ」


「否定、か……それは逃避ではないのか?」


「違う。“選ぶ”ということは、“選ばなかった自分”を抱きしめる覚悟でもある」


そう告げた瞬間、虚構の蓮が微笑んだ。


「ならば、証明しろ。“選び続ける覚悟”を――」


次の瞬間、蓮の手に光の剣が現れ、対峙する存在との決戦が始まった。




イリスの前に現れたのは、己の“原初の姿”――未だ力に目覚めぬ一匹の白い竜だった。


竜は問いかける。


「お前は、なぜ“人”の形を選んだ?」


イリスは静かに答えた。


「“共に在る”ために。それが、竜ではなく、私が“仲間”になるための選択だった」


「力を持ち、永劫を生きる存在として、その在り方は矛盾に満ちている」


「矛盾があるからこそ、私たちは“語り継げる”神話になる」


白竜が唸りを上げると同時に、試練の炎が舞い上がった――




シャムは“過去の罪”と対峙していた。


暗殺者として、命を奪った数多の影。


「――後悔は、していない。けれど」


彼は、震える拳を握りしめる。


「今、俺は『守るために力を使いたい』と思ってる。それが、贖いになるとは思っていない。ただ、それが――俺の選択だ」


闇に立ち尽くす亡霊たちは、静かに頭を垂れ、彼の道を開いた。




リーナの前には、幼き日の姿。


剣を手に、何も持たず、それでも立ち上がろうとした過去。


「……あなたがいたから、今の私がある」


「じゃあ、“私”は、消えていいの?」


涙を浮かべた幼いリーナに、彼女は微笑みかけた。


「いいえ。“あなた”がいるから、私は剣を持ち続けられるの」


過去と現在が重なり、剣は光となって収束する。




ネフェリス、ノア、マリル、カイエン――彼らもまた、それぞれの内面にある“選ばれなかった記憶”と向き合い、その存在を肯定していく。


やがて全員が“自己選定”を終え、再び《ゼロ・リミナリア》の中央に収束する。


蓮の剣が空に掲げられた瞬間、環状遺構が光を放ち、巨大な文字が空間に刻まれた。


《汝ラ、選定者トシテ認証ス》


その声と共に、新たな扉が開かれる。


「これが……」


「神々すら干渉しえない“未来の選択権”」


ミストが頷き、ノアが静かに言う。


「つまり、ここから先は誰にも書かれていない、真なる白紙の未来」


蓮は歩き出す。


「なら、描こう。俺たちの神話を」


その足取りは、確かな決意を帯び、仲間たちがその背を守るように並んだ。


暁光が降り注ぐ――それは、新しき神代の、ほんの序章にすぎなかった。

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