第180話 再臨の王座
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虚神〈アバーソン〉との激闘の果て、蓮たちは終極因果交点〈カタストロフィ・シンギュラリティ〉にて、かつてない規模の世界再構成を成し遂げた。
崩壊した旧因果系統の断片は、新たな時の流れとして、星霊の意志によって整えられ、再び世界へと織り込まれていく。
だが――それはすなわち、かつての秩序と対峙した〈新秩序〉の胎動でもあった。
星詠の神殿〈セレスティアル・オラクル〉が再び姿を変える。
それは、神々の記憶と星の叡智、そして蓮たちの意志によって再構築された《再臨の王座〈リジェネレイト・スローン〉》。
この王座は、神々が去った後の世界を導く者の象徴であり、同時に――世界そのものに“問い”を投げかける装置でもあった。
「君は、選び取った。では、次は“創る”覚悟があるか?」
王座から放たれる問いに、蓮は静かに目を閉じ、胸に手を当てる。
そこには、創世因子〈ジェネシス・コード〉の結晶が、脈動していた。
「……ああ。行こう。俺たちの“建国”を始めよう」
彼の声に呼応するように、仲間たちが王座の周囲に集う。
イリスは静かに微笑みながら、その背に星霊の翼を広げた。
「星命融合因果式の安定化、完了。新たな時空座標群も同期完了。あとは、あなたの意志次第です、蓮」
リーナはいつもの剣を構えながら、空を見上げた。
「でも……この世界を変えようとする動き、私たち以外にもある。油断しちゃダメだよ?」
「フッ、変えるってことは、それだけ“守ろうとするもの”の反発も生むってことだ。正しさは一つじゃないってことさ」
シャムが皮肉混じりに肩を竦めながら、腕を組む。
その目には、覚悟と静かな闘志が灯っていた。
そして、神殿の奥――王座の背後に佇んでいた、神殿の主たる星霊装置が、再起動の兆しを見せる。
ミストが即座にその反応を読み取った。
「起動因果が……変質している。これは……誰かが、外部から因果接続を試みている?」
「まさか、外の世界と繋がろうとしてるのか?」
ノアが眉をひそめる。
そして次の瞬間、空間が微細に震えた。
異空間から転移の波動。
それは、浮遊大陸の外――世界の縁を超えて接続された、新たな勢力の到来だった。
「確認――魔導機神反応、6体。コードネーム:天機の六連星〈メカ・シグナス〉!」
マリルが悲鳴にも似た声で叫ぶ。
それは、かつて失われたはずの禁忌兵器群――帝国最終防衛機構の名だった。
「なんで……!? そんなもの、星詠の記録にも残ってないのに!」
カイエンが青ざめた顔で呟く。
だが、現実はすぐさま真実を突きつける。
〈メカ・シグナス〉の一体が空間を強制突入し、星殿の外壁を破壊した。
それはまるで、世界そのものへの宣戦布告のように。
「王座の奪取が目的かもしれない」
ネフェリスが冷静に分析する。
「“王座”は今、因果構築の中心座標。制御されたら、この世界全体が乗っ取られる可能性すらある」
「やらせるわけにはいかないな」
蓮が剣を構えた。
――再び、世界を守るための戦いが始まる。
激戦が始まった。
空間を揺るがす、魔導機神たちの砲撃。
その一撃一撃が、存在そのものを抉り取るかのような破壊力を持っていた。
蓮たちは星殿の周囲に陣を張り、迎撃を開始する。
「援護する、蓮!」
イリスが広げた翼から放たれた星霊光は、メカ・シグナスの一体を強制的に時空裂断へと追いやった。
「一体撃破、でもまだ五体!」
リーナが剣閃を走らせる。
その剣筋が作る軌道は、時間すらを切断し、敵の予測行動を封じる。
「これは……機械であって機械じゃない。因果に擬態した存在だ」
ミストがその核心に近づく。
「つまり、情報そのものを兵器化したような……!」
ノアが補助計算を展開し、蓮の動きを誘導する。
「いける……蓮、次の斬撃は、今しかない!」
「……了解!」
蓮が大地を蹴った。
その一撃が、第二体の魔導機神を貫く。
だが――その瞬間、背後から謎の圧が襲いかかる。
「蓮! 危ない!」
シャムが身を挺してその斬撃を防ぐ。
衝撃が星殿全体を揺らす。
「“敵”は……メカ・シグナスだけじゃない」
マリルが震える指先で空を指さす。
そこには、次元の裂け目から現れる黒いシルエットがあった。
それは、人の形をした“何か”。
だが、そこに宿る存在は、確実にこの世界の理を超えていた。
「来たか……否定因果の残滓〈アンチ・シンギュラム〉」
カイエンの声が震える。
それは――虚神〈アバーソン〉の断片。
既に滅びたはずのその存在の“残滓”が、再び具現化しようとしていた。
「くそ……今はまだ、完全じゃない。でも……いずれ“本体”が再構築されれば……!」
「だからこそ、今、ここで叩いておく」
蓮の声が凛と響く。
「これは、“建国”の戦いだ。世界を創るってことは、それを守る覚悟を持つってことだ!」
王座〈リジェネレイト・スローン〉の輝きが増す。
その中心に立つ蓮の姿は、もはや一人の少年ではなかった。
意志を持ち、未来を選び、世界を紡ぐ者――
すなわち、再臨の王。
「行くぞ、みんな――! この世界の礎を、俺たちで創るんだ!」
全員が武器を掲げた。
神なき世界の、最初の建国戦争が、今ここに幕を開ける――。
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