第17話 神殿騎士団との激突
王都の地下道を抜け、辛くも脱出を果たした蓮たちだったが、神殿騎士団は先回りしていた。リーナを連れ戻そうとする騎士団と対峙した蓮たちは、話し合いが通じないことを悟ると、やむなく戦闘へと突入する——。
冷たい夜風が吹き抜ける。王都の外れ、静寂に包まれた丘の上に、剣の抜き放たれる音が響いた。
「リーナ様、神殿へ戻りなさい」
神殿騎士団のリーダー格の男——ガイルは、鋭い目でリーナを見つめていた。彼の銀色の鎧は月明かりに反射し、威圧感を漂わせる。
「戻るつもりはないわ!」
リーナは怯まずに答えた。その手には既に風の魔法が宿っている。
「説得に応じないなら、力尽くで連れ帰る!」
ガイルの声とともに、神殿騎士団が一斉に動いた。彼らはただの兵士とは違い、魔法と剣を組み合わせた戦闘に長けている。
「シャム、後衛を頼む!」
蓮は短く指示を飛ばすと、自ら前に出た。
「おう、まかせろ!」
シャムは双剣を構え、鋭い視線で敵の動きを見極める。
「《風撃》!」
リーナが先手を打った。風の刃が夜空を切り裂き、騎士団の前衛に襲いかかる。しかし、彼らは魔法障壁を展開し、ダメージを軽減した。
「やはり、一筋縄ではいかないか……!」
蓮は魔力を練り上げ、敵陣の中央に向かって詠唱する。
「《炎槍》!」
彼の魔法が炸裂し、炎の槍が神殿騎士団の隊列に突き刺さった。爆風が辺りを照らし、数名が吹き飛ぶ。
「くっ……やはり異世界人か!」
ガイルが歯噛みしながら前に出る。
「貴様をそのまま放置すれば、後に神殿の脅威となる……ならば、ここで討つ!」
彼は大剣を振り上げ、膨大な魔力を注ぎ込む。
「——こいつはヤバいな」
蓮はガイルの一撃の重さを直感的に理解した。
「ならば……受けてみろ!」
蓮は全身の魔力を込め、迎え撃つ準備を整える。
ガイルの剣が振り下ろされた瞬間、蓮は咄嗟にアイテムボックスから《魔鋼の盾》を取り出し、それを防御に使った。
ガキィィンッ!
衝撃が全身を襲い、地面がひび割れるほどの威力だった。
「っく……!」
蓮は盾を構えたまま、後ろへ飛び退る。
「防いだか。ならば次はどうだ!」
ガイルはさらに魔力を練り、連続して攻撃を仕掛けてくる。
「このままでは不利か……ならば!」
蓮は一気に距離を詰め、《風の加速》を発動。高速でガイルの背後に回り込む。
「なに!?」
驚愕するガイルの背後から、蓮は**《雷撃剣》**を放つ。
バリバリバリッ!
雷が剣にまとわりつき、一閃。ガイルの鎧に衝撃が走り、彼は膝をついた。
「ぐっ……!」
「ここで決める!」
蓮はとどめを刺そうとするが、その瞬間——
「隊長!」
他の神殿騎士たちがガイルを守るように割って入り、撤退の動きを見せた。
「くそっ、ここまでか……!」
ガイルは悔しそうに歯を食いしばるが、敗北を認めたようだった。
「リーナ様……あなたの意志が変わらないことは理解しました。しかし、神殿がこのまま見過ごすことはないでしょう……覚悟しておくことです」
そう言い残し、神殿騎士団は撤退していった。
「なんとか……振り切れたか」
シャムが肩で息をしながら、剣を鞘に収めた。
「蓮、怪我はない?」
リーナが心配そうに駆け寄る。
「問題ない。そっちこそ、大丈夫か?」
「はい。でも……神殿がこんなに本気で追ってくるとは思いませんでした」
「お前がそれだけ重要な存在ってことだな」
シャムが苦笑しながら言うと、リーナは複雑そうな表情を浮かべた。
「この先、もっと強力な追手が来る可能性があるな」
蓮は夜空を見上げながら、次の行動を考えた。
「でも、魔の森の調査は避けられないしな……予定通り進もう」
「うん!」
リーナも頷き、三人は改めて旅立ちの準備を整えた。
こうして、神殿騎士団の追撃を振り切った蓮たちは、新たな戦いへと向かうこととなる——。




