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第171話  運命継承式典

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

星詠の神殿――セレスティアル・オラクルにて「新たな星命」が蓮の意思によって刻まれ、世界は静かに、だが確かにその運命を変え始めていた。


かつて神々が星々に定めた因果の構図は、一本の“自由意志”によって、根本から再構築されようとしていた。


それは同時に、蓮たちが最終局面に向かうための“式典”の始まりでもあった。


その地は――浮遊大陸の核心、空に浮かぶ巨大都市《天環都ヴァルメリア》。


かつて高度文明を誇った神代の遺構が眠る都市であり、現在では、蓮たちが打倒した旧帝国の中央演算塔を中心に据え、新帝国〈ユグド・ノア〉の中枢として機能していた。


「――これが、継承の儀か」


蓮はその中心に立っていた。


彼の傍らには、イリス、リーナ、シャム、そして五人の盟友――マリル、カイエン、ミスト、ネフェリス、ノアが並び、そして後方には浮遊大陸で救出された多種族の代表者たちも参列していた。


《天環都ヴァルメリア》の中央広場にそびえる“記録の塔”では、神殿で得た“新たな星命”を受け継ぐための式典が執り行われていた。


これは単なるセレモニーではない。


世界そのものの運命を切り替えるための、実際の儀式だった。


塔の上空には、星々の軌道を模した輝線が幾重にも交差し、時空を繋ぐ巨大な環が構築されている。


それは神々が用いていた「天命転写機構〈ディスティニア・リンク〉」を再現した、最終世界再構成システムの一部であった。


「この装置があれば、世界の“記録”を書き換え、真なる自由意志による統治を実現できる……理論上は、ね」


ミストが静かに呟く。


彼女の視線は、蓮の背に据えられた“星命碑”に注がれていた。


そこには、蓮の選択と誓いが刻まれており、それが「次なる時代」の原型とされていた。


「蓮。覚悟はできてる?」


イリスが静かに尋ねる。


蓮は頷いた。


「俺は、世界を“再生”すると決めた。それはただ、過去を消すんじゃない。受け止めたうえで、進む道を照らすことだ」


星詠の神譜に記された未来像は、決して一つではなかった。


分岐する数多の可能性の中から、最も「希望の芽」を宿す未来を選び取り、それを“星命の核”として現実に転写する。


それが、レガシー・リレイション――運命継承の儀式だった。


だが。


「……近づいてる。あの“ノイズ”の正体が」


リーナの警告と共に、大気が歪んだ。空を覆う星環構造の一点に、黒い歪みが発生する。


そこから溢れ出したのは、虚無のような存在――《崩壊連鎖因子〈ノルン・フラクチャー〉》。


それは、かつて蓮が星詠の神殿で見た“終わりの未来”で、自身が管理していたはずの存在。


それが今、逆流するようにこの現実へと侵食を始めたのだ。


「まさか、過去の俺自身の記録が干渉してくるなんてな……!」


蓮が歯噛みしながら剣を抜くと、シャムがその隣に並んだ。


「大丈夫だ、蓮。お前はもう、一人じゃない」


続けて、マリルが巨大な魔導書を展開し、詠唱を開始した。


「記録再演、第二層展開! 神代魔術陣、星位調律アーク・オブ・レゾナンス!」


都市の空を星光が覆い、五人の新たな仲間がそれぞれの力を発動する。


カイエンは戦士の咆哮を上げ、ミストは計算された魔法で敵の動きを封じ、ネフェリスは星の音を増幅して精神を強化、ノアは空間座標を安定化させて虚無の浸食を防ぐ。


総力戦の中、蓮はイリスと共に塔の最上層へと走る。


「この星環が破壊される前に、転写を完了させる必要がある!」


「わかってる!」


二人が辿り着いた記録核の中心で、蓮は“選ばれた未来”をその手に掲げた。


星命譜の輝きが増し、転写装置が起動を始める。


だが――その瞬間、虚無の歪みから黒き影が飛び出した。


それは、かつての蓮自身の“写し身”。


「俺は、管理者〈エディター〉だ。自由意志など、ただの幻想。無限の選択肢は、全て崩壊を招くだけだ」


黒き蓮の言葉が響く。


だが、蓮は一歩も引かない。


「だからこそ、俺は選ぶ。崩壊を恐れて動かないより、誰かと共に歩く未来を――選ぶんだ!」


叫びと共に、蓮の剣が星命譜と共鳴し、放たれる光が“写し身”を貫いた。


黒き影は静かに微笑みながら消える。


「ならば、未来を託そう。……“俺”よ」


その瞬間、転写は完了し、天環の構造が新たな星命へと書き換えられた。


空に瞬く星々の輝きが変わる。


過去に囚われた因果が、希望という名の意志によって上書きされたのだ。


静寂の後、空から降る光の雨。


それは祝福か、それとも再生の涙か――


イリスがそっと囁いた。


「これで、あなたは本当に……この世界の創造者になるわ」


蓮は静かに頷いた。


そして、皆のもとへ戻ると、高らかに宣言した。


「俺たちは、新たな星を生きる! 誰かが決めた運命じゃない、自分の手で選んだ未来を!」


その声に、都市全体が、いや――世界そのものが応えるように光を放った。


運命継承式典〈レガシー・リレイション〉は、こうして完了した。


だが、物語はまだ終わらない。


次なる敵の気配が、遥か銀河の彼方から、確かに迫っていた。

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