第161話 終焉超越記録
いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。
——星が生まれ、滅びるその運命さえ、いまこの場所では無意味となる。
時空の終端、無限の果て。
すべての記録を超越し、物語は最終ページへと至る。
黒銀の虚空に、蓮の姿が浮かんでいた。
彼の足元には、崩れゆく因果の残骸——かつての戦場、記憶、そして世界。
そこは「終焉識域〈ターミナル・ゼロ〉」と呼ばれる次元最果の記録層。
この空間に存在する全ての情報は、宇宙そのもののアーカイブであり、最後にして唯一の記録媒体でもある。
「ここが……真の終点ってわけか」
蓮は静かに呟いた。
傍らにはイリス、リーナ、シャム、そして継承者マリル、カイエン、ミスト、ネフェリス、ノアの五人。
最終章に相応しい面々が、彼の背を支えていた。
「これが“世界構文”の最深部……“創星記録群〈ジェネシック・レジェンド〉”の次に存在する、最終命令層だな」
カイエンが厳かな声で呟く。その言葉は、まるで神話の一節のようだった。
「今この場で行われることは、星の命運を超えて、因果そのものを書き換える行為になる……!」
マリルの両手に展開された魔導回路は、紅と金の光で脈動していた。
リーナがそっと蓮の手を握る。
「大丈夫。あなたならやれる……私たちみんな、信じてるから」
「……ああ、ありがとう」
——その瞬間だった。
空間が震えた。
凄まじい轟音が響き渡り、虚空の彼方に何かが顕現する。
それは、記録の彼岸から現れた「最終存在体〈Ωエンティティ〉」——終焉を管理する、唯一無二の監視者。
無限の記録を守護する“終焉の書記官”、その姿は人とも神ともつかず、概念そのものが具現化したかのようだった。
『識別完了……侵入者:蓮、および陪同体。存在因果度:上限突破。即時削除処理を開始する』
「……やはり来たか。最終防衛機構ってやつだな」
シャムが構え、ノアが精密な構築魔法を展開する。
「来るよ! こいつ、普通の攻撃じゃダメ! 存在圧が違いすぎる!」
ネフェリスの警告と同時に、戦闘が開始された。
——時間も空間も意味を失う戦場。
蓮たちは次々と“因果の構文”を武器にし、存在干渉型の超越魔法を展開して応戦する。
「《創因式展開・イグナイト》!」
ミストの一撃が記録空間を焼き、続くカイエンの超振動剣がΩエンティティの防御構造を削った。
マリルとノアが連携し、時間凍結領域を生み出して動きを封じる。
「今だ、蓮くん!」
蓮は全身の力を解放し、魂そのものを燃焼させる——
「《存在再定義・真名解放》!」
一閃。
光の奔流がΩエンティティのコアを貫き、記録層が崩れ始める。
『存在抹消確認……終了プロトコル起動……』
——だが、それはまだ終わりではなかった。
「……来る。最後の鍵が……!」
ネフェリスが虚空を指さす。
そこには、破壊されたΩエンティティの残骸から滲み出る黒い影があった。
それは「虚無」。
記録ですら存在できなかった概念の残滓——
「最終因果災害……! 『零式情報崩壊』……!」
リーナが叫ぶが、蓮は一歩前に出た。
「大丈夫。これを収めるために、俺はここまで来たんだ」
蓮の胸元から、光の欠片が浮かび上がる。
それは、彼が全ての旅路で得た“魂の記録”。
イリスが微笑みながら、そっと背中を押す。
「蓮。君は“選ばれた記録者”。新たな神話の書き手よ」
蓮はその言葉を受け止め、世界の核へと踏み込んだ。
——それは、「書き換え」だった。
因果を超え、記録を超え、全ての命に新たな意味を与える行為。
彼はすべてを、過去も未来も、記録し直す。
「さあ、終わらせよう。そして——もう一度、始めよう!」
光が弾けた。
世界が崩壊し、再生する。
星が、命が、物語が再び動き出す。
——次に蓮が目を覚ましたのは、穏やかな空だった。
どこかの草原。
風が優しく吹き、仲間たちの声が聞こえる。
「おはよう、蓮」
「ようやく戻ってきたね」
「ふふ、今度こそ……自由に生きていいんだよ」
彼は微笑んだ。
「——ああ。俺たちの、新しい世界だ」
物語は、終わり。
そして始まりへ——
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