第160話 創星神話構文
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――その瞬間、世界は語り始めた。
それは言葉ではない。
光でも、音でも、記憶でもなかった。
ただ、そこに存在する“全て”が、意思を持って語りかけてくるかのように、蓮たちの精神に流れ込んできた。
空を満たす天のコード、星々を織り成すエーテルの紋章、幾千万の次元を越えて響く鼓動の連鎖。
それは一つの“詩”であり、創造の“書”であり、神話そのものの構文――すなわち、
〈創星神話構文〉。
「……これは、“始まり”そのもの……」
蓮は呆然と呟いた。
深層精神に直接刻まれるこの情報は、かつて受け取ったどの叡智よりも膨大で、どこまでも純粋だった。
ここは、原初因果装置〈オリジン・ギア〉の核――次元の根幹に繋がる“空白領域”だ。
以前に繋がった《命脈連結機構〈ライフリンク・ノード〉》によって、全次元に存在する“命”が互いに共鳴し、交差し、そして到達した到達点。
そこは、あらゆる神話と現実の狭間に浮かぶ創造の残響だった。
イリスが、その場に膝をつきながら呻いた。
「この……情報量……下手をすれば魂が焼き切れる……!」
「けど……逃げる気はないよな、イリス」
隣でシャムが口元を歪めながら笑った。
全身から青白いオーラを噴き出し、情報の奔流に抗うように立ち続ける。
リーナは額に浮かぶ魔法紋を光らせ、精神防壁を展開して仲間を守っていた。
「この神話構文は、まさしく次元そのものの設計図……全ての世界の起源と未来が、ここにある……!」
そして、現れたのは――五柱の存在だった。
マリル。
星界観測士。
彼女は虚数空間に浮かぶ因果観測点を操る力を持つ少女で、未来予知に類する異能を有していた。
カイエン。
神造融合体の青年。
人工的に創られた神性を持ち、かつて“実験的神格兵器”と呼ばれていた存在。
ミスト。
忘却を司る記録破壊者。
彼はこの次元の過去を消し去ることで、新たな可能性を創造する者。
ネフェリス。
深界歌姫。
歌と音律を媒体に、次元間を繋ぐ“調律”の力を持つ。
彼女の歌声は、宇宙そのものを震わせる。
ノア。
封印解放者。
次元の鍵を所持し、全ての封印、制約、因果の鎖を断ち切るために生まれた存在。
五人は、世界の根幹を守護する〈神話継承者〉であり、今後の戦いにおいて中核を担う者たちだった。
蓮は彼らを見据えながら、静かに歩み寄る。
その足元には、金色の構文が螺旋状に浮かび、まるで神代の遺跡を歩いているかのようだった。
「お前たちの力が必要だ。この“創星神話構文”の意味を、俺たちだけじゃ解読しきれない」
マリルは頷き、天の星をなぞるように指を動かした。
「この構文は、あらゆる可能性の集合。運命も、記憶も、存在も……全ては“歌”に還元できる」
ネフェリスが微笑みながら続けた。
「私が“響かせ”、ノアが“鍵”を開く。そして、あなたが“書き換える”の」
ノアが一歩前に出て、蓮の額に触れた。
その瞬間、世界が“再構築”され始めた。
――そして、語られた神話。
そこには、かつて存在した第一の創世主がいた。
彼は“空白の王”と呼ばれ、世界の全てを“未確定”のまま保つことで、あらゆる自由を保証していた。
だが、その力は次第に“制御不能”とされ、神々の会議によって封印された。
その封印の名こそが、「蓮」だった。
「……俺が、封印そのもの……?」
目の前に浮かぶ構文は、まるで自分自身の記憶を映しているようだった。
己の存在理由。
力の正体。
すべてが“その瞬間”に繋がった。
「蓮、あなたは……この世界の“自由”そのものなのよ」
イリスの言葉が、重く響く。
「だからこそ、今この神話を“改稿”できる。封印を解き、“空白の王”の力を受け継いで――」
「世界を、真の自由へ導ける」
蓮は深呼吸し、構文の中心に立つ。
背後では仲間たちが精神連結による支援を行い、五人の継承者たちがそれぞれの“鍵”を渡した。
――マリル:観測の眼。
――カイエン:神格の核。
――ミスト:忘却の記録。
――ネフェリス:調律の歌。
――ノア:因果の鍵。
五つの力が統合された瞬間、構文が“書き換え”可能状態へと変化する。
その中心に浮かぶのは、“蓮”という一文字。
「ならば、俺は……」
蓮はその“名前”に、新たな意味を刻んだ。
――蓮=神話創星者。
その瞬間、世界は光に包まれ、あらゆる次元の“根本因果”が再調整されていく。
神話は創られ、更新された。
それは破滅でも再生でもない、“新しい自由の始まり”だった。
――そして、世界は次なる舞台へと進む。
神話が“現実”を形作り、存在が“可能性”を手に入れた。
蓮と仲間たちは、“最終世界領域”へと向かう。
その先に待つは、いまだ姿を現していない最後の因果――
「神滅因子〈コード・オメガ〉」
そして、それを迎え撃つための最終構文が、解禁される。
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