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第158話  次元創世圏

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

光は収束し、闇は拡散する。


かつて「世界」と呼ばれた多重層構造体は、蓮の選択によって“統合”という奇跡を果たした。


もはやそれは単一の世界ではない。


存在し得るすべての次元を内包する、超次的な創世の領域——“次元創世圏〈コズミック・ジェネシス〉”。


「……ここが、新しい世界」


蓮は、再構築された虚空に立っていた。


足元には、未定義の光子群が渦巻いている。


それは大地であり、海であり、空気であり、未だ命を得ぬ“可能性の集合”だった。


振り返れば、仲間たちがいた。


イリス、リーナ、シャム。


加えてマリル、カイエン、ミスト、ネフェリス、ノアの五人もまた、異なる次元を越えてこの“始まり”に立ち会っている。


かつての秩序は失われた。


帝国も、神も、管理者すらも存在しないこの場所で、蓮たちは問われていた。


——“君たちは何を創るのか?”


それが、ア・エティル=ア=ラフ・オムニフィクスが残した最後の課題だった。


「理屈じゃない。これは……意志の問題なんだ」


蓮の言葉に、イリスが小さく微笑む。


「ならば、私たちが選ぶ未来を、ただ信じよう」


「蓮。お前が導いてくれ。俺たちは……それに賭ける」


シャムの確信に満ちた言葉が、静かに場に響いた。


蓮は頷く。


「“コズミック・ジェネシス”——それは、新しい法則と存在を定義する領域。俺たちが、ここで世界を再構築する」


再構築のための最初の儀式が始まった。


マリルが無数の魔術言語を空間に描き出し、膨大な術式構造体を編む。


彼女は魔術理論そのものの具現であり、存在するすべての言語体系に干渉できる。


「創造系統開始……“虚核起動式・アルファコード”」


空間に浮かぶ数百の魔法陣が連結され、超構造体へと変貌する。


それはかつての“神の魔法”すら超える、理を塗り替える演算機構。


その中心に、カイエンが立つ。


銀装の機構を展開し、重力干渉フィールドを展開。


「物質構造の骨組みを形成する。リーナ、反応物質を頼む」


「了解。アイテムボックス、開放——!」


リーナは愛用のアイテムボックスから、世界中を旅して集めた“起源素材”を解放する。


創世樹の種、深海核晶、星光の粉塵、時流結晶など、奇跡と呼ばれた素材群が空に舞う。


それを、ミストが時間制御で安定化させ、ネフェリスが虚界との“接続”で拡張。


「この世界に、空虚が入り込まないように——存在密度を調整します!」


「虚数制御完了。ノア、君の出番だ」


「はい……!」


ノアは、自らの“未完成の神核”を胸から引き抜いた。


それは、かつて創造神が廃棄した“真なる始まりの種”。


「これが……私たちの、新しい世界の……コアです!」


神核が解放され、魔術機構と物質構造がそれを取り囲む。


全ての力が集約し、“始まり”が形を持ち始める。


蓮は最後に、アセンション・コードを起動する。


世界創造鍵コード・アセンション、起動——!」


次元そのものが軋む音が響く。


空が、時が、空間が震え、無の中に“存在”が芽吹いた。


——光と、命と、物語が始まる。


「ここから先は、創りながら進むしかない」


蓮は、新たな大地に足を下ろしながら言った。


目の前に広がるのは、未だ名前すら持たぬ草原。


風が吹き、水が湧き、小さな芽が顔を出す。


「まだ文明も、社会も、歴史もない。だがそれでいい。これから作っていくんだ」


「世界のテンプレートは、ある程度こちらで設定しておきます」


マリルが新たな魔術言語を構築しながら応じた。


「空間ごとに環境設定を行いますね。生態系も安定させないと」


「軍事や都市設計については、俺が引き受ける」


カイエンが断言した。


「だが、無理に兵器は作らない。自衛以上の力を求める世界にはしたくない」


「俺は……そういう世界を守るための剣でいい」


シャムは静かに刀を抜き、太陽の光を受けてそれを納めた。


「ミストとネフェリスは、文化と芸術を頼めるか?」


「了解。未来から得た知見を、慎重に反映させます」


「私は感性で動くタイプだけど……面白いもの、いっぱい作ってあげる」


ノアは地面に座り込むと、小さな花を咲かせる魔法を使った。


「私は、こういうのが好き。名前のない、小さなものに意味を与えるってこと」


蓮は、その様子を優しく見守る。


「俺は……ここに“物語”を残すよ。世界が、ただ機能するだけじゃなく、“生きて”動くように」


時が流れる。


浮遊大陸に住まう多種族の者たち、魔の森から呼び戻された民、深界や冥界から救出された異邦の命たちが、新たな“統一世界”に次々と呼応してくる。


蓮たちはそれを迎え入れ、居住域を広げ、法と秩序を柔らかに定義していく。


争いの芽はまだある。


だが、以前よりも“対話”が可能な空気が確実に存在していた。


蓮はそれを「希望」と呼んだ。


ある日、蓮は空の上に浮かぶ巨大な構造物を訪れた。


それは《アストラル・ネクサス》と呼ばれる、世界中の意思を統合・観測する中枢塔だった。


中に入ると、マリルがモニター群に囲まれて作業をしていた。


「蓮。新たな階層が観測されました」


「階層?」


「ええ。私たちが再構築した世界の“下層”に、古い因果の残滓が……“影の残響”として蓄積されています」


「まるで……この世界の“前世”みたいなものか」


「はい。そして、その“前世”には、あるひとつの物語が記されていた。かつて、少年が神に抗い、世界を書き換えた……という話」


蓮は笑った。


「まるで、俺たちの物語そのものじゃないか」


世界は進化し、成長していく。


次元創世圏——それはただの世界ではない。


意志が反映され、命が繋がり、物語が継承される“動的な宇宙”だ。


蓮は空を見上げた。


そこには、まだ名も知らぬ星々が瞬いている。


その一つひとつに、これから新たな命が生まれ、物語が育ち、誰かが誰かを救っていくのだろう。


「行こう、みんな。この世界には……まだ無限の未来がある」

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なお、第2作目の作品『定年異世界転生 ~家電の知識で魔法文明をアップデート!~』もよろしくお願いします。

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