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第15話  彼女の決意

神殿の上級司祭は、リーナが旅に出ることを認めないと告げる。しかし、魔の森の異変を放っておけない彼女は、悩みながらも蓮に問いかける。「私も一緒に行っていい?」——その問いに、蓮の答えは?

「君がどう思おうと、神殿としては認められない。」


上級司祭の言葉が、蓮の脳裏にこびりついていた。


(リーナを旅に誘うのは難しそうだな……。)


翌朝、蓮は神殿の庭で一人考え込んでいた。魔の森の異変が、神殿に運ばれてくる患者の症状と関係しているのは明らかだった。だが、神殿がリーナを手放さない以上、無理に連れていくのは得策ではない。


「蓮さん。」


聞き慣れた優しい声が背後から響いた。振り向くと、リーナが静かに立っていた。


「リーナ。」


「……昨日、司祭様と話したのでしょう?」


彼女の瞳には、迷いと決意が同居していた。


「聞いたのか?」


「ええ。『旅に出ることは許さない』って……。」


リーナは困ったように微笑んだが、その表情はどこか寂しげだった。


「私、ここでずっと暮らしてきたの。家が没落して、神殿に預けられて……。最初は不安で仕方なかったけど、ここでたくさんの人を助けられるようになって……嬉しかった。」


リーナの言葉には、神殿への愛着がにじんでいた。しかし、彼女は言葉を続けた。


「でも……最近思うの。傷ついた人たちを癒やすだけでなく、傷つく人を減らすことはできないのかって。」


彼女は蓮をじっと見つめた。


「魔の森の異変……私が行けば、何かできるかもしれない。でも、神殿は許してくれない。」


リーナは拳を握りしめ、深く息を吸った。そして——


「蓮さん、私も一緒に行っていい?」


まっすぐな瞳が、蓮を見つめていた。



リーナの問いに、蓮は慎重に考えた。


彼女が旅立てば、神殿との関係は確実に悪化する。最悪、追われる身になる可能性もある。しかし、それでも彼女が行きたいのなら——


「リーナ、お前はどうしたい?」


「……私は、自分の力を活かしたい。だから、あなたたちと一緒に行きたい。」


蓮は静かに彼女を見つめ、決断した。


「分かった。だが、無理はするなよ?」


リーナの顔に笑顔が広がった。


「ありがとう、蓮さん!」


こうして、新たな仲間が加わることになった。



「リーナがいない!? すぐに捜索を!」


翌日、神殿では彼女の姿が消えたことで大騒ぎになっていた。


「彼女を連れ出したのは、異世界人の青年……。」


上級司祭は険しい顔で呟くと、すぐに神殿騎士団を招集した。


「彼女は神殿にとって重要な存在……見つけ出し、連れ戻せ!」


蓮たちはまだ知らなかった。彼らの旅が、すでに神殿からの追跡を受けていることを——。

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