表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/201

第157話  真理階層回帰

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

空間が砕け、時間がたわみ、因果そのものが泣き声を上げる。


そこは、あらゆる理を超えた領域——“真理の源泉”と呼ばれる場所だった。


蓮の足元に広がるのは、色も形も意味すらも失われた、概念の断片。


歩みを進めるたびに足元の風景は変わり、山が現れ、海が裂け、星々が瞬いては霧散した。


ここは、存在するすべての始まりにして終わりの位相。


“階層世界”と呼ばれる異次元群の最深層——第零階層。


「……ここが、真理階層〈ルート・アセンション〉か」


蓮はそう呟きながら、背後の仲間たちを見やった。


イリス、リーナ、シャム、そして、新たに合流したマリル、カイエン、ミスト、ネフェリス、ノアの五人が、幾層の次元を越えてこの地にたどり着いていた。


マリルは浮遊する光球に近い存在——魔術理論の具現体。


カイエンは銀色の装甲を纏った戦機士で、かつて天界の戦争に介入していた伝説の傭兵。


ミストは時間跳躍者であり、未来から現在へと逆流してきた預言の番人。


ネフェリスは虚界に棲まう幻霊。


ノアは——創造神の失敗作、廃棄された“未完成の神核”。


「全部が……混ざってきてる。法則が壊れて、歴史が逆流してる……!」


リーナの叫びに、シャムが静かに目を細める。


「ここは、存在するすべてのルートが一点に収束する交差点……“根源回帰”の儀式に相応しい舞台というわけか」


「まさか、本当に“運命の管理者”に会うつもりなの?」


ミストが不安げに問う。


「……ああ。俺は、この世界の再構築のために、根源の真理そのものと向き合うつもりだ」


蓮の言葉に、一同は静かに頷いた。


突如、空が裂けた。


無音の衝撃。次元の膜が剥がれ、その奥から現れたのは、巨大な“光の輪”。


そこから降臨したのは、人型にして人ならざる存在——


「我は、因果律を監視し、存在階層の整合を保つ者。“真理の管理者”、ア・エティル=ア=ラフ・オムニフィクス」


その声は万雷の如く、同時に全ての心に直接響く思念。


蓮の内面にまで侵入し、彼の過去、未来、記憶の全てを見透かす。


「お前は、観測者を超えた異分子。破壊と再生を内包する“例外”——蓮よ。何故、この地に来た?」


蓮は答えた。


「この世界を、終わらせたくないからだ。このままでは、全ての層が崩れ、宇宙そのものが折り重なって崩壊する。俺は、世界を新たな形で“書き直す”ために来た。神でも魔でもなく、ひとつの意志として」


ア・エティルは一瞬、沈黙した。


「面白い。お前は“全てを再定義する権限”を望むのか?」


「望む。ただし、それは力を得るためじゃない。……責任を背負うためだ」


その瞬間、彼の背後に現れる多重の光輪。


仲間たちの想念が共鳴し、蓮の存在そのものが“観測者”を超える。


「ならば、“問い”を与えよう」


ア・エティルが右手を掲げると、空間に無数の“鍵”が浮かんだ。


「選べ。お前の世界を繋ぎ止める“命題”を」


その中にひとつ、黒銀の鍵が浮かんでいた。


《命題:人類の希望とは何か》


蓮は迷わずそれを掴んだ。


瞬間、世界が爆ぜた。


彼は意識の深奥へと引きずり込まれ、自らの記憶と世界の記録が交差する空間へ放り込まれる。


そこには、無数の自分がいた。


選ばなかった蓮。

誰も救えなかった蓮。

裏切られ、壊れ、壊した蓮たち。


だが彼は、目を逸らさなかった。


「俺は……俺が選んだ“希望”を、何度でも選び続ける」


その一言と共に、光が彼を包んだ。


「蓮!」


目を開けると、仲間たちが彼を取り囲んでいた。


そして彼の胸には、新たな“世界創造鍵”——《コード・アセンション》が埋め込まれていた。


「……ア・エティルは?」


イリスの問いに、蓮は静かに答える。


「もういない。この世界に、“管理者”はもう不要だ。これからは、俺たちが——選ぶ番だ」


そのとき、空が晴れ、断片化していた階層が静かに“統合”され始める。


断絶していた種族、孤立していた領域、消滅しかけた時間軸——それらが、蓮の“選択”を基点に再構成され、ひとつの連なりとして命を得る。


「これが……俺たちの“再定義”だ」


その光の中心に立つ蓮の姿は、もうかつての少年ではなかった。


すべてを背負い、なお笑って前に進む、選ばれし“世界再誕の記録者”。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ