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第152話  命脈連結機構

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

新たなる盟約の光が、天に浮かぶ六芒星を中心に広がる。


そこはもう、旧時代の“王国”でも、“帝国”でもなかった。


あらゆる種族が集い、想いを重ねるための“中心”――その名も〈中核宙域サンクティア・ノード〉。


蓮たちは、そこに設けられた〈命脈連結機構〉と呼ばれる古代装置の前に立っていた。


それは、星々の命脈――すなわち種族間の命の流れや魔力循環を束ね、新たな世界構造へと変換するための、かつて神々が用いたとされる装置。


「これが……“命を結ぶ装置”か」


蓮は眼前の透明な結晶構造を見上げた。


装置の中心には、まるで胎児のような光の核が脈動しており、その脈動に合わせて空間がわずかに呼吸しているかのようだった。


「すごい……これ、本当に生きてるみたい」


リーナが思わず手を伸ばすと、装置の一部が反応し、淡い光を返した。


「……あらゆる種族の“命脈”をつなぐ。これが機能すれば、浮遊大陸も深界も、すべてが一つになる可能性があるわ」


イリスが神妙な面持ちで言う。


シャムは眉をひそめながら、装置の奥にある制御核へ視線を送った。


「ただし……こいつは、ただの機械じゃない。“意思”がある。起動には、明確な意志と目的が必要だ」


その言葉に、マリルがにやりと笑った。


「なら簡単。蓮がど真ん中に立って、“建国の意志”ってやつをぶつければいいってことでしょ?」


「簡単に言うなよ……」


と、苦笑しながらも、蓮は前へと進んだ。


命脈連結機構の中心へ足を踏み入れた瞬間、周囲の空間が淡く揺らぎ、巨大な〈魔術陣の座標世界〉が展開される。


その中心に浮かぶのは――


『星命連結図――ライフノード・コンパス』。


それは、全種族の魂の座標と共鳴力を視覚化する、神代の叡智。


その座標の一部には既に“リンク済”の印が灯っていた。


蓮たちの魂が交わり、共に歩んできた証だった。


だが、それだけでは足りない。


浮遊大陸の全種族、深界の存在、星幽層の漂流者、そして異界から来た者たちの意志もまた、この装置に刻まれねばならなかった。


「ここからが本番ってわけね」

ネフェリスが軽やかに足を踏み出す。


彼女の背にある六翼が煌めき、機構と共鳴する。


カイエンが重々しい音と共に拳を構えた。


「全種族との魂の共振……やってやるさ。俺の“心臓”は、そのためにある」


ミストが指先で霧を描くと、次元が微かに揺らぎ、彼に共鳴した星幽体が幾つも姿を見せる。


「魂は、時を超えて呼び合うんだ。これがその証明だよ」


ノアは静かに結晶を掲げ、周囲の情報を読み取っていく。


「座標は整いつつある。だが、最後の要が必要だ。……蓮、君の“心”だ」


その言葉に応えるように、蓮は機構の中心に手を伸ばす。


「……俺は、命を繋げる。憎しみや奪い合いの連鎖じゃなく、“未来”を託せる命の循環を創る」


その瞬間、命脈連結機構が完全起動する。


光が弾け、全種族の魂が幾何学的な軌跡を描き、中央のコアに集約されていく。


過去に交わった者たちの名が、空に文字となって浮かび上がる。


魔の森の戦士たち、浮遊大陸の民、帝国で戦死した兵士、そして未だ名も知らぬ命たち。


――全ての命が、この瞬間、ひとつに繋がった。


蓮の胸の奥から、静かに何かが解けた。


かつて背負っていた「英雄」の呪い。争いの連鎖。


それらすべてを飲み込み、彼は再び歩き始める。


「……これが俺の、“建国”の第一歩だ」


命脈連結機構の起動とともに、浮遊大陸全域に脈動が走った。


各地の地脈が調律され、空間の歪みが徐々に安定していく。


その中で、新たな動きが起きていた。


かつて“冥界領域”として封印されていた地帯が突如として浮上し、命脈の波に引き寄せられるように融合を始めたのだ。


「これは……“次元統合”の序章……?」


イリスが驚愕の表情を浮かべる。


シャムは剣の柄に手をかけ、警戒の構えを崩さない。


「違う。これは“誰か”が意図的に仕組んでいる……!」


その言葉と同時に、命脈装置の端末から警報が鳴り響いた。


『外部干渉検出――空間リンクに異常。未登録存在がノードに侵入中』


空間が裂けた。


現れたのは、黒い装甲を纏う謎の集団。


その中央に立つ者が、低く冷たい声で告げた。


「命を繋ぐだと? 滑稽だな。滅びを受け入れることこそ、真なる救済だ」


次なる戦火は、すでに始まっていた。

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