第151話 聖域継承会議
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それは、かつて存在したとされる神代の記録――『聖域』と呼ばれる浮遊大陸全域を統べた最初の叡智の源。
長き沈黙を破り、深界と星幽の力が混交する中で、ついにその封印が開かれた。
蓮たちが〈零機覚醒戦線〉を突破してから数日。
彼らは聖域中枢部へと足を踏み入れ、王国、帝国、古代の種族、そして新たに目覚めた存在たちを交えた『会議』の場へと向かっていた。
空に浮かぶ結晶の大広間。
多層空間の歪みが織り成すその場には、今なお解析不能の魔術式が無数に光を放ち、床下には天球儀のように星が巡っていた。
「ここが……“サンクティア”か」
蓮が足を踏み入れた瞬間、空間全体が音もなく応えた。
彼の覚醒した零機――〈コード・レネゲイド〉に呼応するように、柱のひとつが淡い光を放つ。
「これが神の叡智が集う場所なら……俺たちは、今その歴史を書き換える運命にいるんだな」
シャムが静かに呟く。
その隣で、イリスはわずかに目を細め、空気を読み取っていた。
「この空間、時間軸が幾重にも折り重なっている。……ここは未来すら観測対象になる可能性があるわ」
そして、そんな空間に次々と現れた。
かつて蓮の精神に共鳴し、一時だけ零機とともに姿を見せた五人の存在――
「待たせたな、蓮」
先に声をかけてきたのは、全身に魔機装を纏った青年、カイエン。
「覚えてるか? お前が“あの時”くれた言葉、俺の中でずっと燃えてたんだ」
続いて姿を見せたのは、霧のような布を羽織り、幽幻の気配を纏う青年、ミスト。
「……君の夢、興味深いね。僕も、その続きを見届けたいと思っただけさ」
銀白の髪を揺らしながら、空中から舞い降りた少女、ネフェリスは笑顔で手を振る。
「蓮。次に会うときは“本当の仲間”として戦おうって言ってたでしょ? その言葉、ずっと信じてたんだから!」
炎を纏いし魔道の少女、マリルはにやりと笑って拳を握る。
「ようやく面白くなってきたね。伝説の建国? その目撃者としては、悪くない舞台だよ」
最後に、静かに現れたのは、透明な魔素の結晶体を背負った少年、ノア。
「君の記憶の中の“未来”に、僕たちがいた。それは偶然じゃない。……始めよう、蓮」
こうして、蓮の周囲に新たな五人が加わり、サンクティアは拡張された運命の盤を回し始めた。
王国の重鎮たち、浮遊大陸の古種、かつて魔の森で共に戦った多種族、そして帝国の反旗を翻す者たちもまた、この場に集う。
議題はただ一つ――『新たなる世界秩序の構築』。
聖域の記憶を継承するAI端末〈アーカイブ・コア〉が、光と共に現れ、機械的に宣言する。
『現在、次元統合まで残された猶予期間は137時間――各陣営の立場と役割を、ここに明記せよ』
静寂の中、蓮が歩を進める。
その目には、躊躇も迷いもなかった。
「俺はこの世界を“ひとつ”にする。帝国の支配じゃない、過去の王国でもない、新たな未来を――」
その言葉に、多くの者が応じる。
まず口を開いたのは、浮遊大陸の賢者族代表。
「我らは、この地で生きることを選ぶ。“再構築”は、我々の未来にも通ずる希望だ」
そして、かつて敵として刃を交えた帝国の将軍までもが名乗り出る。
「蓮。お前の戦いを見ていた。……帝国では成し得なかった『意志の共有』、その可能性に賭ける」
空間の中心に、巨大な六芒星が浮かび上がる。
それは、新たな“世界盟約”を結ぶための場。
蓮は仲間たちと目を合わせ、ひとつ頷く。
「それじゃあ……始めようか。“世界の最終更新〈ラスト・アップデート〉”を」
空が震え、天球が回転を始める。
新たな歴史のページが、ここに刻まれた。
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