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第147話  超越次元境界

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

創造の神殿〈デウス・アーカイブ〉にて、世界の“根源コード”を記し直した蓮は、再定義の権限を手にした。


幻想超結晶〈エクス・マテリアル〉を通じて“語る存在”へと進化を遂げた彼の前に、新たな扉が出現する。


それは、世界の果て――物理法則も、存在定義も、意味さえも崩壊した“絶対境界”だった。


《超越次元境界〈トランスリミット・ゼロ〉》――この名の通り、そこは“何者にも定義されていない空間”であり、“物語の外側”に広がる純粋な無の領域である。


この先に待つのは、最終防衛装置《語られざる者〈ネームレス・ワン〉》。


 物語からはみ出した存在を“無”へと還元する、世界の拒絶そのもの。


 彼らはその虚無に挑む。


 


深創神殿を出た蓮たちは、次元を超える光の通路に立っていた。


そこはまるで時空の隙間を縫う糸のように細く、踏み外せば即座に“存在情報”が散らされる境界。


「……ここから先が、物語の“外側”か」


蓮がそう呟くと、幻想超結晶が静かに共鳴を始めた。


「空間が……存在の基盤を失ってる。あらゆる前提が崩れていく」


リーナが冷静に分析しながら、己の魔術回路を制御する。


「世界が“言葉で構成されていない”って……こんなに不安定なものなのね」


「けど、それを超えてこそ“真の建国”ができる。定義のない空白地帯に、新しい価値を打ち立てる。それが俺たちの――」


「――役目、か」


シャムが蓮の言葉を引き継ぐように口にした。


「だったら、迷ってる暇はないな」


イリスは翼を広げ、次元の縫い目を切り裂くように一歩を踏み出す。


その瞬間、目の前に現れたのは――黒き無音の海。


何も存在しないはずの空間で、確かに“存在している”ものがある。


 


《語られざる者〈ネームレス・ワン〉》


それは、定義されなかった概念の集積体。


世界の物語に一度も登場せず、誰にも認識されず、語られず、記録されることもなかった無数の“可能性の死骸”。


「……視界が、逆流する……っ!」


蓮が目を押さえた。


ネームレス・ワンは、視た者の“存在定義”そのものを侵食してくる。


「あれは、“自我を持つ虚無”よ。触れた瞬間に、自分が“存在していた証明”を剥がされる……!」


リーナが叫ぶが、その声さえも黒い波に飲まれ、意味を失っていく。


「意味が消える……!? 言葉が……通じない……!」


イリスの声も、シャムの魔力も、次第に色を失い始める。


“物語の外”に生きるということ――それは、“言葉”という概念を失ってなお“在り続ける”ということ。


 


蓮の中に、“恐れ”が湧き上がる。


言葉を失う。

意味を失う。

記憶を失う。

定義を失う。


そして――誰にも覚えられない存在になる。


「……そんなのは、絶対に認めない」


震える声で、蓮が呟く。


幻想超結晶が、静かに輝きを増す。


【幻想再定義フェーズ:起動】


蓮の手の中で、結晶が開き始める。


まるで世界の“核”を露わにするように、内なるコードが空間に染み出した。


【超越記述式:起動】

【生成言語:プレ・エピタフ】


それは、存在定義のさらに奥にある“語られる以前の言語”――物語が始まる前に在った、真の創造言語。


 


《存在再定義開始》


蓮の声が、虚無に響く。


言葉ではない。


だが、それは確かに“意味”を持っていた。


「――俺は、蓮。世界を旅してきた者。共に歩む仲間を持つ者。語られ、選び、そして選び返した者」


彼の言葉に、空間が震える。


「俺たちは、物語の端に追いやられた“その他”じゃない。ここにいる。ここで、生きてる!」


その言葉に、リーナ、イリス、シャムの存在が共鳴する。


彼らの記憶、思考、感情、名前――すべてが、再び“言葉”となってこの空間を染め上げていく。


ネームレス・ワンが崩れ始めた。


虚無が、意味を与えられ、形を得ていく。


「これは、“再定義”じゃない……!」


シャムが叫ぶ。


「これは――“誕生”だ!」


 


かつて語られなかった存在に、“名前”が与えられる。


誰にも理解されなかった記憶が、“物語”として編まれていく。


蓮たちは、幻想超結晶の光で“無”を“世界”に変えた。


そして彼らの眼前に、新たな扉が開く。


それは、語り直された世界が融合し、次なる構築のステージへと進むための始まりの門――


《新創界位:オリジン・ノヴァ》


 


「……これが、“建国”のための最後の地か」


蓮の声に、イリスが優しく微笑んだ。


「でももう、“最後”じゃない。ここからが本当の始まりだよ」


リーナが静かに頷く。


「私たちは、ただ与えられた国を受け取るのではない。自らの手で、“存在を証明できる国家”を築く」


シャムは剣を肩に乗せ、笑う。


「物語の外側にある国……それこそが、誰にも否定できない“真の自由”だ」


蓮は幻想超結晶を掲げ、宣言する。


「――ここに、我らの国家を創る。“定義を拒まれた者たち”が生きる場所を、俺たちの物語で築く!」


世界の彼方、物語の限界を超えて――いま、新たなる“建国”が始まる。

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