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第137話  深界源層

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

新作『定年異世界転生 ~家電の知識で魔法文明をアップデート!~』を投稿しました。

疲れたあなたに、ちょっと息抜きの作品です。ほのぼのしてください~。

――世界は、なお深く。

目に見えるものの裏に、さらにその奥底に。

大地の鼓動が、確かに存在していた。


それは、遥か古より秘匿されし領域。

世界そのものの中枢たる場所――


深界源層〈ディープ・コア・レイヤー〉。


それは、神々さえ触れ得ぬ、絶対なる“根源”の地だった。


「……見つけた、のか」


低く、重々しいシャムの声が、地下深くの巨大空洞に響く。


眼前に広がるのは、あり得ざる光景。


空間そのものが歪んでいる。


石でも金属でもない、未知の物質で構成された巨大な層。


それは、螺旋状に絡まり合いながら、大地の最奥を護るように存在していた。


「これが……深界源層〈ディープ・コア・レイヤー〉……」


蓮の声が、微かに震えていた。


それは恐怖ではない。


畏敬。


この世界そのものへの、純粋なる畏怖と尊敬だった。




事の発端は、リーナの一言だった。


「蓮。……深界核〈ディープ・コア〉は、まだ終わりじゃないかもしれない」


世界再生計画〈リバース・プロジェクト〉。


それに必要なエネルギー源――深界核。


その解放は成功した。


だが、リーナは膨大な魔力流動の解析から、更なる存在に気づいてしまった。


「……深界核は、あくまで“触媒”。本当に再生を成し遂げるには、その下層に存在する“根”を辿る必要がある」


すなわち――


深界源層〈ディープ・コア・レイヤー〉。


そこに至らなければ、世界再生は不完全に終わる。


そして、最悪の場合。


オルフェウスが予告した“彼の座より目覚める者”に対抗する手段も、得られない。


「行くぞ」


蓮は即断した。


イリスも、シャムも、リーナも。


誰一人、迷いなどなかった。




そして今。


彼らは立っていた。


この世界最奥の領域。


誰も見たことのない“真なる世界”の中枢に。


蓮が一歩、前へと進み出る。


不思議だった。


重力さえ歪むこの空間で、彼の歩みだけは不思議と確かだった。


その中心。


渦巻くように存在する巨大な核。


それは、深界核とは比べ物にならない規模と質量を持つ存在だった。


「……起動する。いいな?」


「もちろん」リーナが頷く。


「私たちの目的は、世界を再生すること。そして……来たる存在に、備えること」


「私も問題ない」


シャムが低く呟いた。


「お前が選んだ道だ、蓮」


「……ふむ」


最後にイリスが、静かに微笑んだ。


「ならば――進め。我が王よ」




蓮が手を伸ばす。


その掌に宿るは、深界核のエネルギーと、これまでに得た全ての知識と力。


――反応が、起きる。


ゴゴゴゴゴゴ……


大地が震動し、世界が鳴動する。


深界源層の中心から、膨大すぎるエネルギーの奔流が立ち昇る。


その瞬間。


「来たか……!」


シャムが叫ぶ。


空間が、裂けた。


存在するはずのないものが、そこに顕現する。


それは、かつてオルフェウスが口にした“彼の座”より目覚める者の使徒――


〈深界守護者〉〈ディープ・ガーディアン〉。


黒き巨人。


虚無に呑まれたような異形。


この世界のルール外の存在。


「全員、構えろ!」


蓮の号令と共に、激突は避けられないものとなった。




戦いは、熾烈を極めた。


だが蓮たちは、決して退かなかった。


イリスの竜撃。

シャムの暗殺技。

リーナの解析魔法。


そして蓮の剣。


全てが重なり、やがて――


「これで終わりだああああああ!!」


蓮の一撃が、〈深界守護者〉を粉砕した。




静寂が訪れる。


そして、深界源層は――


「……語りかけている?」


リーナが呆然と呟いた。


蓮たちの脳裏に、直接響く声。


それは、世界そのものの意思だった。


『……選ばれし者たちよ』


『汝らは、世界の“根源”に至りし者』


『世界再生の権能を授けよう』


次の瞬間。


蓮の手に、新たなる紋章が刻まれた。


それは――


〈世界樹の印章〉。


真なる世界再生の鍵。


そして物語は、なお深くへ。


世界の根源へと到達した蓮たちは、いよいよ世界そのものを再構築する計画へと踏み出すのだった。

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