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第134話  深界核解放

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

――世界の心臓が、目覚める。


それは、あまりにも静かで。


あまりにも巨大で。


そして、決して触れてはならぬ――世界の禁忌そのものだった。




「これが……深界核〈ディープ・コア〉……」


蓮の呟きは、まるで異質な圧力にかき消されるかのように、虚空へと溶けた。


そこは、かつて〈奈落域アビス・ゾーン〉と呼ばれた、魔の森最深のさらに下――


その地下に存在していた、誰も知らぬ空間。


地層を超え、大地の根を穿ち、膨大な魔力と情報の奔流が渦巻く、


まさしく「世界の心臓」。


それが――深界核〈ディープ・コア〉。


巨大な水晶構造体のように浮かぶそれは、まるで星そのものが閉じ込められているかのような輝きを放っていた。


「これが……世界そのものの『核』……?」


イリスが、思わず呟いた。


「どうやら間違いない。オルフェウスの残した解析記録とも一致している」


リーナが展開する魔導端末のデータにも、同様の結果が示されていた。


シャムが険しい表情で言葉を継ぐ。


「……だが、問題はそこから先だ」


そう。問題はこれからだった。


この〈深界核〉は、ただのオブジェではない。


それは――この世界のあらゆる因果と情報を束ね、制御し、記録する存在。


言い換えれば、


世界そのものの「OSオペレーティング・システム」。


しかも現在、そのシステムに異常が発生している。


「『侵蝕因子』……だな」


蓮がそう呟いた。


〈因果の迷宮パラドクス・ラビリンス〉で遭遇した無数の因果歪曲現象。


オルフェウスが語った「外界からの干渉」。


そして今――この〈深界核〉を覆う、黒いひび割れと、赤黒い光の侵蝕。


それこそが、世界そのものを蝕む最大の危機だった。


「侵蝕因子の正体は未だ不明……だが、放置すればこの世界は崩壊する」


リーナが険しく言う。


「私たちが建国しようが、何を築こうが、全部無に帰すわけね……」


イリスが静かに頷いた。


「だからこそ、解放する必要がある。深界核の本来の力を」


そう――


深界核解放ディープ・コア・ブレイク〉。


それは、この世界を蝕む全ての異常を排除し、正しき世界の因果を取り戻す唯一の手段だった。


だが――




「当然、ただでは済まないだろうな」


蓮の言葉に、シャムが苦笑する。


「だろうな。あそこを見ろ」


シャムの指差す先。


そこに――黒い“何か”が姿を現しつつあった。


それは、もはや魔獣ですらない。


存在そのものが、異界の法則で構成されたかのような、歪んだ影。


名も知れぬ、異界の守護者。


否――


〈深界の守護者コア・ガーディアン〉。


「来るぞ――!」


蓮が剣を構える。


無数の影が、一斉に襲いかかってきた。




――斬撃。


――雷撃。


――炎撃。


――時間干渉。


あらゆる技と魔法が交錯し、戦場は混沌と化した。


だが、蓮たちは一歩も退かない。


「俺たちは……この世界で生きるって決めたんだ!」


蓮が吠える。


「守るぞ――この世界を!」


イリスが天翔け、リーナが魔術を紡ぎ、シャムが異界技で道を拓く。


そして――


蓮が、深界核の中央へと辿り着く。


「この世界の因果よ――俺たちに応えろ!」


彼が手を翳した瞬間。


深界核が輝いた。




それは――解放。


無数の情報が奔流となって蓮に流れ込み、その身体を貫いた。


「うああああああああああああっ!!」


耐え難い情報の奔流。


意識を焼き尽くすような因果の嵐。


だが――


それでも、彼は立っていた。


この世界の未来のために。


仲間のために。


ここで生きる全ての命のために。


そして――


深界核解放ディープ・コア・ブレイク〉、完遂。




――閃光。


それは全てを浄化する白き輝き。


侵蝕因子は崩壊し、因果は正常へと戻り始める。


深界核は静かに鼓動を取り戻し、世界は――再び、命を宿した。




「……これが、世界の本当の姿か」


蓮は、蒼く輝く新たな世界を見上げながら、静かに呟いた。


世界の再起動。


新たなる命の営み。


だが――それは、同時に新たなる戦いの予兆でもあった。


なぜなら。


侵蝕因子は――外から来たもの。


すなわち、外界にまだ「敵」が存在するという証左に他ならない。


「俺たちの戦いは……まだ終わっちゃいない、か」


その呟きに、仲間たちは力強く頷いた。


世界の深層を解き放った先に、何が待つのか。


それは、誰にもわからない。


だが、蓮たちは進む。


この世界を生きる者として。


新たなる未来を、その手で掴むために。

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