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第133話  因果の迷宮

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

――世界は、かつてない歪みに沈もうとしていた。


新帝国フェルマータ。


その建国からほどなくして、蓮たちを待ち受けていたのは“未知”でも“異界”でもない。


それは、“因果”そのものの迷宮――世界に刻まれた運命の矛盾〈パラドクス〉だった。


 


「……これが、“奈落域”のさらに奥?」


蓮たちは、かつて誰一人として踏み入れたことのない領域に足を踏み入れていた。


そこは、異様だった。


時が歪み、空間がねじれ、存在そのものが不確かになる場所。


先程までいた場所が、振り返れば存在しない。


進めば同じ場所に戻される。


時計の針は逆回転し、影が地面から浮かび上がる。


まさに、因果の迷宮〈パラドクス・ラビリンス〉。


「イリス……ここ、本当に“世界の底”なのか?」


蓮の問いに、古代竜のイリスでさえ眉をひそめる。


「……いいえ。これは“底”ですらない。概念そのものが、狂わされている。ここは……世界に刻まれた“因果の断層”。あらゆる歴史の破片と、可能性が衝突し、融合し、歪んでいる」


リーナが、震える声で付け加える。


「時空魔術の理論でも説明がつかない……この空間自体が、一つの“存在”のように動いているわ。まるで――」


「――誰かが創り上げた、“世界の牢獄”みたいだな」


シャムの言葉に、誰もが無言となった。


 


迷宮の内部は、次元すらも狂っている。


一歩踏み出せば、異なる時代の情景が現れる。


彼らの目の前に現れたのは――


「……俺たちの、過去?」


そこには、かつて蓮たちが旅した王国時代の風景が広がっていた。


滅びた帝都。

戦いの跡。

倒したはずの敵。

死んだはずの人々。


「……偽物か?」


しかし、彼らは確かにそこに“存在”していた。


そして、無言で蓮たちに武器を向ける。


 


過去の自分との戦い。


それは、ただの物理戦ではない。


“選択”の重み、“決断”の正しさ、“罪”と“贖罪”が一斉に牙を剥く。


 


蓮は、かつて倒した敵を見据えながら、呟く。


「……全部、俺の歩んできた結果だ」


剣を抜き、進む。迷いはない。


イリスが、静かに言葉を紡ぐ。


「過去は過去。私たちは今を生きる者」


リーナが魔術を展開し、シャムがその背を守る。


 


戦いは苛烈を極め――そして、勝利はもたらされた。


 


だが、それは迷宮の“入口”に過ぎなかった。


 


さらに進んだ先。


そこに待ち受けていたのは、“未来”だった。


だが――それは最悪の未来。


廃墟と化した〈グラン=アーク〉。

死に絶えた仲間たち。

荒廃した世界。


「……これは、俺たちの未来だと?」


その中央に、ただ一人立つ存在がいた。


それは――“もう一人の蓮”だった。


 


黒き衣に身を包み、蒼白の瞳を輝かせる存在。


「……世界は、変わらない。いくらもがこうと、最後は同じ結末に辿り着く」


それは、蓮自身の“絶望”が生み出した幻影。


「だがな……」


蓮はその男に向かって歩み出す。


「俺はまだ――諦めちゃいない」


剣を構え、声を張り上げる。


「この手で切り拓くんだよ! たとえどんな未来が待っていようと!」


 


“絶望”との戦いが始まる。


 


過去を越え、未来を打ち破り、彼らは“因果”そのものに挑んでいく。


 


長き戦いの果てに。


迷宮の中心――その場所に辿り着いた蓮たちが目にしたもの。


それは、“存在しないはずの扉”だった。


不気味な紋様。

歪む空間。


そして扉に刻まれた一つの文字。


 


――〈深界核ディープ・コア


 


その瞬間。


世界が震えた。


深層より響く、何者かの声。


『……ついに来たか。因果の外より来た者たちよ』


イリスが震える声で呟く。


「……あれは、“本当の敵”」


リーナが震える手で魔術を展開する。


「……これが、“深界”の中心……!」


シャムが剣を構える。


「行くぞ、蓮。ここが、本当の始まりだ」


 


蓮は、深く息を吸い込み――その扉に手をかけた。


 


「この因果すらも、俺たちが超えてみせる!」

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