表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/201

第129話  世界の深層

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

――世界は、静かに動き始めていた。


魔の森。


かつて呪われし未踏の地と恐れられたその領域は、今や新たなる希望の胎動の地と変貌を遂げつつあった。


蓮たちが〈ロード・オブ・ウィルド〉を討ち果たし、建国儀礼〈フェルマータ・グランディア〉を果たしてから、すでに数か月が経過していた。


だが、その時間は決して平穏の証ではない。


むしろ、嵐の前の静けさ――そう言った方が正しい。


その理由はただひとつ。


あの男。〈超界の漂泊者〉オルフェウスが最後に残した、あの言葉。


『……この世界は"まだ"知らない。

 本当の"世界の深層"を。

 いずれ来る。

 彼の座より目覚める者が。』


 それが意味するものを、誰ひとり正確に理解はしていなかった。


 だが、それでも蓮は動いた。


動かねばならないと、本能で悟っていた。


――備えよ。


それが唯一の答えだった。




「まさか、ここまで早く……形になるとはな」


その言葉を零したのは、シャムだった。


魔の森の中心部、かつて魔源域と呼ばれた場所は、いまや急速に変貌を遂げていた。


巨大な城郭都市〈グラン=アーク〉。


蓮が〈アイテムボックス〉から取り出す異世界の素材、遺跡群から発掘した古代技術。


そして人間族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、はては竜族たちが持つ知恵と技術。


それら全てが混じり合い、わずか数か月の間に、都市国家の基盤が築かれつつあった。


中央には、蓮たちの拠点ともなる巨大な玉座の間を擁する城。


その周囲には住居区画、交易区画、訓練施設、工房、研究所――ありとあらゆる文明の礎が揃えられていく。


「物資の確保はアイテムボックス任せ。建材は森の魔獣素材と遺跡石材の融合。労働力は各種族の協力。制度は俺がテンプレぶち込みながら、イリスとリーナと相談して調整。結果……国家建設、超加速モードってわけか」


蓮が肩を竦めれば、イリスが呆れたように微笑む。


「……それでも、これほどの速度で進むとは。さすがは蓮、ね」


リーナも苦笑しつつ資料を整理する。


「制度設計も一応は形になってきたわ。『代表評議会』と『国家元首』の二重構造。各種族から代表を選出して議会を構成し、最終決定は蓮に委ねる……民主と王政の折衷型。かなりバランスはいいはずよ」


「国家名も決まったんだろ?」


「ああ。『新帝国フェルマータ』――世界に終止符ではなく、新たな旋律メロディを奏でる帝国。あの建国儀礼の名に因んで」


蓮は、その名を噛み締めるように呟いた。


――フェルマータ。


世界の果てに生まれた、新たな国の名前。




だが。


その平和と発展の裏側で。


異変は、静かに進行していた。


それは、森のさらに深奥――かつてすら誰も近寄れなかった領域。


奈落域アビス・ゾーン〉と呼ばれる地帯。


そこに、奇妙な反応が観測され始めた。


「蓮。これ、見て」


リーナが示したのは、魔源域から採取した魔力の流れの変動データだった。


そこには、通常ではありえない動きが記録されていた。


「……魔力が、逆流している?」


「それだけじゃないわ。完全に“外”から流れ込んでいるの。しかもこの波長……あのオルフェウスと同系統」


イリスが険しい表情を浮かべる。


「……超界の波動。異界――いや、深界ディープワールドの力」


その時だった。


遠方より、巨大な咆哮が響いた。


それは、世界そのものを震わせるような、異形の存在の咆哮。


シャムが剣を構える。


「……来やがったか。いよいよ、"向こう側"の住人ってわけか」


蓮は静かに立ち上がる。


「行くぞ。世界の深層ディープ・ワールド……その真実を、見に行こうか」




そして。


蓮たちは知ることになる。


この世界がまだ知らぬ、本当の“世界の深層”の存在を。


それは神話でも、伝説でもなく。


紛れもない、現実リアルそのものだった。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ