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第13話  王都への道と宰相の裁定

隣国へ入った蓮とシャムは、王都の門で身分証を持たないために衛兵に囲まれる。事情を話すも信用されず、騒ぎを聞きつけた宰相が現れる。王城へ連行された蓮たちは、そこで王国の過去と異世界人の存在について知ることとなる。


王都の門前は昼を迎え、多くの商人や旅人で賑わっていた。蓮とシャムもその列に並んでいたが、いざ自分たちの番が回ると、問題が発生した。


「身分証をお見せください。」


門の衛兵が淡々とした口調で求めてくる。しかし、蓮もシャムもこの国で正式な身分証を持っていない。


「……持ってないんだ。」


「では通すわけにはいきません。」


すぐさま周囲の衛兵が警戒の色を強め、手を柄にかける。シャムは緊張を隠せず、蓮もどうしたものかと考える。


「俺たちはこの国の人間じゃない。別の国から逃げてきた。」


「どういうことだ?」


蓮は、元いた国で召喚され、命を狙われたこと、そこから逃げるためにこの国にたどり着いたことを簡潔に説明した。しかし、衛兵たちの顔色は変わらない。


「そんな話、信じられるか。異世界人が召喚されて、それがどうしたと言うんだ?」


「……だめか。」


事態は面倒になりそうだと悟った蓮だったが、その時、門の騒ぎを聞きつけた貴族風の男が馬車でやってきた。


「どうした?」


衛兵長が慌てて敬礼する。


「宰相閣下、申し訳ありません。身分証を持たぬ者が入城を求めています。」


宰相と呼ばれた男は、蓮たちを一瞥すると目を細めた。


「……異世界人、か。面白い。連れていけ。王城で話を聞こう。」



王城に連行された蓮たちは、大広間へと通された。そこには先ほどの宰相と、数人の護衛が待っていた。


「では、詳しく話してもらおうか。」


宰相は静かに促す。蓮は、改めて自分の身の上を話した。


「……なるほど。君は異世界から召喚されたが、命を狙われ逃げてきたと。」


「そうだ。」


宰相は考え込むように顎に手を当て、しばらく沈黙した。そして、意を決したように口を開く。


「王に報告する。謁見の場を用意しよう。」



王座の間で待っていたのは、壮年の男性――この国の王だった。


「……そなたが異世界人か。」


「そうです。」


王はしばし沈黙し、蓮をじっと見つめた。そして、ふと笑みを浮かべる。


「実はな、我が国にもかつて異世界人がいたのだ。」


「……え?」


「我が国は、そなたを召喚した国と戦争をしたことがある。その際、異世界人が現れ、我々を勝利に導いたのだ。」


「そなたのように、命を狙われ逃げ延びた者なのかは分らぬが、確かな力を持っていたと聞いている。だから、そなたの話も信じよう。」


王の言葉に、蓮は安堵した。



「だが、そなたに頼みたいことがある。」


王は続ける。


「この国の外れに広がる『魔の森』が、近年異様な速度で拡張を続けている。原因は不明だが、放置すれば我が国にとっても脅威となる。」


蓮はその話を聞き、考え込む。


「それで、俺に何を?」


「原因を突き止め、収めてほしい。」


「異世界人は特別な力を持つという。その力で原因を突き止め、願わくば拡張を止めて欲しいのだ。」


蓮は眉をひそめた。


「それができたら?」


王は静かに微笑む。


「その地をそなたに与えよう。そなたの国を作るがいい。」


蓮は目を見開いた。建国の話が、ここで出るとは思わなかった。


「考える時間をやろう。ただし、決断は早いほうがいい。」



謁見を終えた蓮とシャムは、王都の街を歩いていた。魔の森へ行く前に準備を整えるため、まずは情報を集めることにしたのだ。


その最中、神殿を訪れた蓮は、一人の少女と出会う。


「あなた……旅の人?」


金髪に青い瞳の少女――リーナが、微笑みながら声をかけてきた。


「君は?」


「リーナ。神殿で神官見習いをしているの。」


リーナの雰囲気に、蓮はどこか安心感を覚えた。


「あなた、すごく不思議な雰囲気を持ってるわね。」


「そうか?」


「ええ。でも、悪い人には見えない。」


蓮は、彼女との出会いがこれからの旅に大きく関わってくることを、この時はまだ知らなかった。

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