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第124話  黎明創国

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

帝都アーク・ベリアル——かつて栄華を極めたこの地は、いまや炎と瓦礫の都市と化していた。


戦いは終わった。


皇帝アーセルト・ザ・ルインは討たれ、異界殲滅兵器〈ラグナ・コード〉は停止。


帝国軍は指導者を失い、四散し、各地に点在していた反乱軍や解放軍がこの地を掌握しつつある。


だが——


「終わった……わけじゃねぇよな」


蓮は、まだ煙の立ち上る帝都の中央広場に立ちながら、静かに呟いた。


これからが本当の始まり——そう、帝国という巨大な存在を打ち倒した後に訪れる混沌と、再生の時間だ。


その場には、リーナ、シャム、そしてイリスが揃っていた。


彼らもまた、蓮と同じ思いを胸に抱いている。


「……蓮。帝国の“その後”を、どうするつもりなの?」


リーナが尋ねる。


彼女の視線の先には、各地から集まった反乱軍の幹部たちや、王国軍の指揮官たちの姿があった。


人々は蓮を自然と“次の王”として見ている。


あれほどの戦いを勝ち抜き、英雄として讃えられた彼に、その資格がないはずがない。


だが——


「俺は王にはならない」


蓮は、はっきりと言い切った。


その一言に、場が一瞬静まり返る。


誰もが驚き、そして次の言葉を待つ。


「……俺がこの地を救ったのは、あくまで未来のためだ。けど、この地を治め、導いていくのは……この地で生きてきた人間じゃなきゃならねぇ」


そう語る蓮の表情は、静かで、決して迷いのないものだった。


「適任者はいる」


蓮が視線を向けた先には、反乱軍をまとめ上げ、帝国各地の解放戦線を指揮してきた壮年の男——ジグ・ヴァルガン将軍の姿があった。


かつて帝国の将軍でありながら、その腐敗に嫌気が差し、独自に反乱軍を立ち上げた男。


その統率力と人望は絶大で、何より、彼は“この地”の人間だ。


「ジグ。あんたがこの帝国跡地を治め、新たな国を築いてくれ」


蓮の言葉に、ジグは目を見開き——そして、静かに頭を垂れた。


「……光栄だ。蓮殿。貴殿が築いた未来を……この老骨、必ずや守り、導こう」


歓声が、どこからともなく湧き上がった。


それは蓮の王就任を望む声ではない。


“この地の人間による、この地の未来”——その意思に、人々が賛同した瞬間だった。


 


建国の準備は、王国の後ろ盾によって急速に進んでいった。


王国からは多くの支援物資と専門家が派遣され、帝国の遺構を利用した新たな国造りが始まっていく。


蓮はその一部始終を見届けた後——静かに、仲間たちに告げた。


「……行くぞ。俺たちは、次の場所へ向かう」


「魔の森、だね」


リーナが微笑む。


蓮と王国国王との間で交わされた、もう一つの約束。


帝国打倒の暁には、かつて“人の手が及ばぬ領域”とされた〈魔の森〉に、新たな国家を築くこと。


それこそが、蓮たちの“本当の建国”だった。


「ははは。あの森……普通の連中なら近づいただけで死ぬぜ?」


シャムが楽しげに笑う。


「けど、蓮とイリスと一緒なら、何とかなる気がするのが怖いな」


「ふむ。むしろ、蓮の〈無限アイテムボックス〉があれば、物資の問題など存在せぬに等しい」


イリスの指摘は、至極もっともだった。


蓮が所有する〈無限アイテムボックス〉——かつて異界からもたらされたその超常の力は、事実上“何でも収納・持ち運び可能”という人智を超えた道具。


水源も、食料も、建材も、全てを内部に保存し、必要な時に取り出せる。


さらに、異界から入手した希少素材や文明の利器までもが詰め込まれており——文字通り“森の中に文明都市を築ける”レベルの装備だった。


 


やがて——蓮たちは、帝都アーク・ベリアルを後にする日を迎えた。


街の人々は蓮たちの門出を惜しみ、祝福の声を送る。


ジグ新王は、その中央で蓮に深々と頭を下げた。


「お前さんが創ったこの“夜明けの国”は、必ずや未来へと繋いでみせる」


「……頼んだぜ、ジジイ」


「おうよ」


握手を交わす二人の姿は、誰よりも“新時代”の始まりを象徴していた。


そして——


「行こう。俺たちの、新しい国を作りに」


蓮たちは、新たな舞台——“魔の森”へと旅立つ。


そこには、まだ誰も知らない未来が待っている。


幾多の困難と、希望と、出会いと、戦いと——そして、創造の物語が。


黎明は過ぎ、新たな時代の幕が開ける。


その名も——

 


「黎明創国〈ニュー・ダスク〉」



——そして、新たな伝説が始まる。

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