第119話 叛逆と創世
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──帝国中枢〈至聖書庫〉の崩壊から数日後。
蓮たちは帝都近郊の隠れ里〈アルシル〉に潜伏していた。
「……この数日で、帝国の混乱はさらに広がっている」
情報を整理するリーナの声には緊張が滲む。
帝国皇帝の失踪。
宰相派と将軍派の内乱。
地方領主の独立宣言。
帝都は、まさに崩壊寸前だった。
「でも、混乱だけじゃ意味がない」
蓮は呟いた。
「俺たちは、壊すだけじゃない。創るんだ……新しい帝国を」
イリスが静かに微笑む。
古代竜としての叡智と威厳を湛えながら。
「蓮。あなたにはその資格があるわ。私も、それに賭ける」
その言葉が、蓮の胸に深く刻まれる。
〈王国〉の国王と交わした約束──「新たな国家の建国」
それは、ただの夢想ではない。歴史に名を刻む戦いの始まりだった。
一方、帝都では──
帝国軍の新たな統治者として暗黒将〈ヴァルティア〉が現れていた。
彼は〈第三勢力〉と接触し、旧帝国の残党や異端兵器を掌握。
「奴らは、帝都の防衛に〈黒鋼の巨兵〉まで投入する気か……」
シャムが資料を睨む。
「正面突破は不可能に近い……が、逆に言えばそれだけ『今の帝国』は防衛に必死だということでもある」
リーナが戦略を描き始める。
蓮は言った。
「なら、俺たちがやるべきは一つだ。帝都の中枢、〈皇帝の座〉に辿り着いて──」
「──新しい旗を掲げる」
作戦会議の夜。
イリスは静かに口を開いた。
「蓮。あなたが建てる国には、竜族の加護を与えるわ」
その一言に、場が静まり返る。
「……それは、竜族の盟約違反じゃ?」
シャムが驚きを隠せない。
イリスはゆっくりと首を振った。
「私が最後の古代竜ならば、その盟約すらも、私の意思で覆せる」
「竜は、強者と共に在る種族。蓮……あなたは、それに足る存在よ」
蓮は力強く答えた。
「イリス。必ず新しい時代を創る。その中に、竜も人も──誰もが共に在れる世界を」
リーナが作戦案を示す。
・帝都南門から陽動部隊(リーナ・シャム・反帝国勢力)
・蓮とイリスは〈空中〉からの奇襲突入
・目指すは帝国皇宮〈白金の王座〉
イリスが翼を広げた瞬間、蒼き光の鱗が夜空を裂いた。
古代竜──その威容は帝都を恐怖と希望の両方で包み込む。
「行くぞ──これが、俺たちの叛逆だ」
蓮は剣を掲げ、飛翔する。
革命の狼煙が、いま帝都に立ち上る。
一方──帝都皇宮。
その最奥で、不気味に光る〈黒き玉座〉。
そこには、かつて失踪した帝国皇帝がいた。
……いや、それは既に人ではない。
「待っているぞ。蓮よ」
その声は、異形の存在〈黒皇帝〉のものだった。
帝国最後の守護者。虚無と侵略の権化。
決戦が始まる。
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