第115話 断罪の異端者、降臨
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異界叡書〈ネメシス・コード〉の解読が、ついに終わりを告げようとしていた。
情報の奔流が収束し、構造が開示され、異界門域〈ゲート・ネメシス〉に新たな“ルール”が浮上する。
それは、この空間全体の制御権を巡る、最後の鍵だった。
しかし――。
「来たか……!」
蓮の低い声とほぼ同時。空間が、音もなく“反転”する。
気配は、一瞬にして全方位を支配した。
その存在は、気配ではない。
圧倒的な「理不尽」として、そこにある。
空間が裂けた。
重力が歪み、光と闇がねじれ、あらゆる因果が乱反射する。
姿を現したのは――
〈断罪の異端者〉
それは人型に似て非なるものだった。
黒と紫の輝きをまとい、無数の眼球のような光点が身体中に浮かぶ。
異界召喚術の最終実験体。
かつて帝国が「神に等しい存在」として創り出し、制御に失敗した最大の禁忌。
異界因子の集合体。知性と破壊衝動の化身。
存在するだけで世界法則を侵食する存在。
『――解析完了』
電子音にも似た声が空間を満たす。
『〈ネメシス・コード〉の回収対象を確認。排除を開始する』
その瞬間――
「散開しろ!!」
蓮の叫びとともに、戦いが始まった。
ヴォイド・ヘリオスは、異界法則そのものを武器とする。
空間圧縮。
重力崩壊。
時間の断裂。
思考干渉。
あらゆる攻撃が、既存の物理法則を無視して襲い掛かってくる。
シャムの加速突撃すら、空間ごとねじ伏せられ。
リーナの魔導砲撃すら、重力操作で圧縮・無力化され。
イリスの解析結界すら、因果干渉によって強制破壊される。
――だが。
「俺たちはもう、“知らない”わけじゃない」
蓮は、握る。
〈ネメシス・コード〉が与えたもの。
それは、この異界門域〈ゲート・ネメシス〉内に限定された“操作権限”だった。
「イリス、座標固定!」
「やる!」
「シャム、次元断層の裂け目を誘導!」
「了解!」
「リーナ、超過魔力流を叩き込め!」
「全部ぶち込んでやるわよ!」
蓮たちは、戦いの最中で異界の法則を逆用し始めた。
異界叡書〈ネメシス・コード〉によって得た制御権は、ヴォイド・ヘリオスの存在座標に干渉し、その因果安定性を揺るがせる。
座標崩壊。情報漏洩。虚無反響。
そして――
「終わりだ!!」
蓮の一閃が、すべてを断ち切る。
世界を覆っていた黒紫の波動が裂け、ヴォイド・ヘリオスの本体核が露わになる。
そこに、四人の総力戦による一撃が叩き込まれた。
――断罪の異端者、ヴォイド・ヘリオス。
その存在は、轟音と共に崩壊し、異界の闇へと還っていった。
だが、安堵する暇はない。
『異界門域の崩壊が始まっています』
セラフィアの残響が告げた。
異界門域〈ゲート・ネメシス〉は、主を失い、不安定化し、完全崩壊へ向かっている。
「脱出ルートは?」
「この座標からゲート転送を強行するしかない!」
「行けるか!?」
「わからない。でも――やるしかない!!」
全員が頷き、異界の奔流を突き進む。
四人の身体を、光が包む。
脱出用のゲート座標が転送を開始する。
その瞬間――背後から、何かの“気配”が蓮の背を撫でた。
(……誰かが、見ている)
異界のさらに向こうから。まだ見ぬ存在が、確かにそこにいた。
そして――
蓮たちは、異界門域〈ゲート・ネメシス〉の崩壊とともに、消え去った。
次なる舞台は、帝都への帰還。
そして〈異界叡書〉がもたらす新たな真実と、次なる敵との邂逅――。
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