第106話 蜘蛛の巣の守護者
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「見つけたぞ。『蜘蛛の巣』を探していた者たち。」
薄暗い建物の扉が勢いよく開かれ、数人の男たちが姿を現した。彼らの鋭い視線が、蓮たちを鋭く射抜く。
「誰だ?」シャムが低い声で問いかける。
「我らは『蜘蛛の巣の守護者』。帝国の秩序を乱す者には、死をもって償わせる。」
男たちは一斉に武器を構え、戦闘の構えを見せる。蓮は手にした『蜘蛛の巣』をしっかりと握りしめ、仲間たちと視線を交わした。
「どうやら、話し合いの余地はなさそうね。」リーナが小さく呟く。
「ええ。ここは力で突破するしかないわね。」イリスが魔法の詠唱を始める。
「シャム、後方の敵に注意を。リーナ、イリス、正面を頼む。俺は中央を突破する。」蓮が指示を出す。
「了解。」シャムが短く答え、素早く後方へと回り込む。
「行くわよ、イリス!」リーナが前方の敵に向かって駆け出す。
「ええ、任せて!」イリスが炎の魔法を放つ。
蓮は深く息を吸い込み、内なる魔力を解放する。
「《雷撃》!」
彼の手から放たれた雷が、中央の敵を直撃し、数人を一瞬で無力化する。しかし、敵の数は多く、次々と新手が現れる。
「くそっ、きりがないな。」蓮が歯を食いしばる。
その時、シャムが後方から声を上げる。
「蓮、建物の構造を利用しよう。ここは狭い。敵を誘い込んで各個撃破するんだ。」
「なるほど、いい考えだ。リーナ、イリス、後退しながら敵を引きつけてくれ。」蓮が指示を出す。
「了解!」リーナとイリスが息を合わせて動く。
蓮たちは建物内の狭い通路や部屋を利用し、敵を分断して各個撃破していく。シャムの的確な指示と、リーナ、イリスの連携が功を奏し、次第に敵の数を減らしていった。
しかし、戦闘が長引くにつれ、蓮たちの体力も限界に近づいていた。
「はぁ、はぁ……まだ来るのか。」リーナが息を切らす。
「でも、あと少しよ。頑張りましょう。」イリスが励ます。
その時、蓮の目の前に、一際大きな男が立ちはだかった。彼の纏う雰囲気は、他の敵とは明らかに異なる。
「貴様がリーダーか。」蓮が警戒を強める。
「そうだ。私は『蜘蛛の巣の守護者』の隊長、ガルヴァン。貴様らをここで葬る。」
ガルヴァンは巨大な斧を振りかざし、蓮に襲いかかる。蓮は間一髪でそれを避け、反撃の魔法を放つ。
「《氷槍》!」
氷の槍がガルヴァンに向かって飛ぶが、彼はそれを斧で叩き落とす。
「そんな攻撃、効かん!」
ガルヴァンの力は圧倒的だった。蓮は冷静に彼の動きを観察し、隙を探る。
「シャム、リーナ、イリス、俺が奴を引きつける。その間に体勢を立て直してくれ。」
「分かった。気をつけて、蓮。」リーナが心配そうに言う。
蓮はガルヴァンの攻撃をかわしながら、彼の動きを封じる方法を模索する。そして、あることに気づいた。
「ガルヴァン、お前のその斧、重そうだな。そんな武器を振り回していては、すぐに疲れるんじゃないか?」
「何っ!?貴様、口だけは達者だな!」
ガルヴァンは怒りに任せて斧を振り下ろす。しかし、その動きは先ほどよりも鈍くなっていた。
「今だ!《風刃》!」
蓮の放った風の刃が、ガルヴァンの腕を切り裂く。
「ぐあっ!」
ガルヴァンが怯んだ隙に、シャムが背後から忍び寄り、彼の首筋に短剣を突き立てた。
「これで終わりだ。」
ガルヴァンはその場に崩れ落ち、動かなくなった。
「はぁ、はぁ……なんとか、倒したな。」蓮が安堵の息を吐く。
「ええ。でも、まだ安心はできないわ。」イリスが周囲を警戒する。
「そうだな。『蜘蛛の巣』を持って、ここを離れよう。」シャムが提案する。
蓮たちは急いで建物を後にし、安全な場所へと向かった。
安全な場所に落ち着いた蓮たちは、改めて『蜘蛛の巣』を開いた。
「この本には、帝国の秘密が記されているんだな。」リーナが呟く。
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