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第105話  禁書と蜘蛛の巣

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

帝都の中央図書館で「異界召喚術の理論と実践」を手に入れた蓮たちは、暗闇の中で迫る敵との死闘を繰り広げ、ようやくその場を脱することができた。


しかし、処刑人との交戦から得たものは単なる勝利ではなく、どこか不穏な予兆を感じさせるものだった。


あの男、処刑人が動いたということは、ただの偶然では済まされない。


「本命は別の誰か、か……」


蓮は密書を手に取りながら、再びその重さを感じた。


これは単なる一冊の書物ではない。


帝国の秘密を解き明かすカギ、そしてその裏には巨万の陰謀が渦巻いていることを、彼は確信していた。


一行は再び自分たちの拠点である宿へと戻り、その夜を過ごすことにした。


しかし、眠れないのは蓮だけではなかった。リーナも、イリスも、そしてシャムも、それぞれの心の中に疑念と不安を抱えていた。


――翌日、帝都の街は静かだった。――


誰もが忙しなく動き回り、日常の流れが続いているように見えた。


だが、その静けさの中には、何かがひっかかるような違和感が漂っている。


蓮はその感覚を無視できなかった。


まるで見えない糸が街全体を絡め取っているような、そんな感じがしていた。


「蓮、何かが変だ。」


リーナがその思いを口にする。


「うん。何かが……」


蓮は口を閉ざし、周囲を見渡す。


市街の中央から東部にかけては、商業地区がひしめき合っている。


しかし、その中でも特に目を引くのは、目立たない路地に隠された小さな建物だった。


建物の外壁には古びた看板があり、その文字はほとんど読めない。


だが、蓮はそれが何を意味するのかを直感的に感じ取っていた。


「行ってみよう。あそこが何かの手がかりになるかもしれない。」


一行は足早にその場所へと向かった。


シャムが周囲を警戒し、イリスが扉を開けると、そこには目の前に広がる広間があった。


中は不気味なほど静かで、まるで時間が止まったかのようだった。


「ここ、何かがおかしいわ。」


リーナの言葉に、全員が警戒の態勢を取る。


廃墟のような建物の中に、いくつもの書棚や箱が乱雑に置かれていた。


それぞれの箱は鍵のかかったものもあれば、放置されたものもある。


その中には明らかに不正規な本も多く、まるで誰かがここに来て、隠したか、隠し続けているかのような様子だった。


「この中に何かがある。」


蓮はゆっくりと書棚に近づき、一冊の古びた本を手に取る。


その表紙には特に印刷されている文字はなく、ただ黒い皮に金の文字で『蜘蛛の巣』とだけ記されていた。


「……蜘蛛の巣?」


イリスがその本を見て、眉をひそめる。


「これはただの本じゃない。どうやら、禁書とはまた違う種類のものかもしれない。」


「蜘蛛の巣、か。文字通り、誰かがこの場所で情報を縦横無尽に張り巡らせている証拠だな。」


シャムが冷静に言った。彼の鋭い直感が、この場所に潜むさらなる危険を感じ取っていたのだろう。


「この本にはきっと、秘密が詰まっている。」


蓮はその本を開くと、中に書かれている文字が目に飛び込んできた。


それは全て暗号化された内容で、表面的には意味不明な記号と数式が並べられていた。


しかし、蓮の目はその暗号を瞬時に解読し始めた。


長年の修行と経験が、彼をこの場面で確実にサポートしてくれた。


「なるほど……」


蓮が呟くと、他の者たちがその一言に反応した。


「どういうこと?」


リーナが尋ねると、蓮は静かに答えた。


「この『蜘蛛の巣』、実は帝国の密かな情報網を記録した本だ。


しかも、これを手にした者は、帝国全体の動向を掴むことができる。


黒幕の正体も、この本に記されているかもしれない。」


「つまり、この本を持つことが、すべての鍵を握るってこと?」


イリスが驚きの声を上げる。蓮は頷き、そしてさらにページをめくる。


「うん。だが、この情報がどれほど重要かは、まだ分からない。」


そのとき、突然、建物の扉が大きく開かれ、数人の男たちが入ってきた。


彼らは薄暗い中から現れ、冷たい視線を蓮たちに向ける。


「見つけたぞ。『蜘蛛の巣』を探していた者たち。」


男たちの一人が声を発した瞬間、蓮たちの周囲が一気に張り詰めた空気に包まれる。


「こちらの情報網も、もうすぐばれるところだった。」


その男は、ニヤリと笑ってから、腰に隠し持っていた武器を取り出した。


続いて、後ろに控えていた者たちも同様に武器を抜く。


「誰だ?」シャムが問いかける。


「私たちは、『蜘蛛の巣』の守護者だ。帝国の秩序を乱す者には、死を与えるのみ。」


その言葉を皮切りに、戦闘が始まった。


突然の攻撃に蓮たちは慌てず、冷静に反応する。


しかし、その戦闘の裏には、ますます深まる陰謀が潜んでいることを誰もが感じ取っていた。

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