表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

テーマ詩集:さよなら

たくさんのさよならのひとつ

作者: 歌川 詩季

 たくさんのさよならをします。

 あたしはひとつ さよならをした


 これまでも たくさんさよならをしてきたし

 これからも たくさんさよならをするんだとおもう


 そんなふうにかんがえると あたしのからだは

 たくさんのさよならからできてて

 たくさんのさよならのためにあるんだって

 なんとなく きづいちゃったから


 これまでの さよならと

 これからの さよならが

 なんだかすごく さみしくて

 なんだかすごく かなしくて

 なんだかすごく いとしくて

 なんだかすごく かけがえのないものみたいで


 しんぞうのある ひだりむねと

 しんぞうじゃないほうのある みぎむねの

 まんなかにてをあてて

 そっと めをとじてみた



 あたしが ひとつしたさよならは

 たくさんのさよならのなかの

 そのひとつでしかなくて

 そのなかのとくべつなひとつでさえ

 ないのかもしれない


 あたしのからだのすみっこのほう

 ひだりあしのこゆびのつけねのあたりに

 いばしょをみつけて

 ひょっとしたら そんなさよならのことなんて

 あたしもいつか すっかりわすれちゃうか

 そんな はくじょうもののあたしに

 こら! わすれるんじゃないって

 たまに ちくりといたむことで

 おもいださせてくれるくらいだろうけど



 それでも

 あたしがした ひとつのさよならは

 あたしのからだをつくってる

 たくさんのさよならのうちの

 たいせつなひとつだから


 すっかりわすれちゃうことがあるかもしれなくても

 ひだりあしのこゆびのつけねあたりが

 ちくりといたむことがあったら

 ちゃんとそれにきづいて


 そんなたいせつな ひとつのさよならがあったこと

 きっと おもいだそうって

 あたしはそうおもう

 だから、ひとつくらいふえても、たいしたことじゃないはず。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] たくさんのさよならがあたしのからだをつくっている――そんな表現が出て来ることが、何だかとてもうらやましいなぁと思いました。 人が生きていく上で、出逢いと別れは避けられないものであって、でも出…
[良い点] 出会いと別れは切手は切り離せないもので切ないですね。 それがあるからこそ美しいのかもしれませんが。
[良い点] すごく心に響く詩だと思いました。 さよならを経験したことのない人はほとんどおらず、改めて人の関係って、出会いと別れで出来てるんだなーと思いました。 子どもにも読ませたい詩ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ