9/18
(9/17) 運転手兼、引きこもり。
コータは車で両親を駅まで見送った。
両親と組合長ら夫婦とは旅行仲間で、
隔月ペースで旅行をする旅マニアだ。
神社仏閣巡りの次は
城跡巡りが熱いらしい。
「おじさん、運転できたんだ。」
「…きみのお父さんのおかげでね。」
残念ながらリナは旅行に同行せずに、
今日ひと晩は、ふたりで過ごすことになった。
コータは自動車免許は、
兄のヨースケから自動車学校に通う
資金の提供を受けたからである。
自動車学校への送迎も買って出るほど、
年の離れた弟思いの、世話焼きな兄だった。
引きこもりといえど、こんな地方では
どこへ行くにも車は必要になってくる。
「これからどこ行くの？」
「帰りますよ。」
「えぇーつまんない。つまんない。」
信号で停車を確認してから、
助手席からコータの肩をぽこぽこ叩いてくる。
――帰りたい。
「わたし、あそこ行きたい。ケレス？」
「あーショッピングモール…？」
ケレスは地元の大きなショッピングモールで、
引きこもりのコータには縁のない場所だ。
「なにか、欲しいんですか？」
「服とか靴とか、ヘアアクセとか、あと下着ぃ。」
「そういうの、母さんに頼んでください。」
「はー？ もーまじ、つまんない。」
リナは祖父母に対して猫をかぶる。
当たりがキツいのはコータに対してだけである。
コータはため息をついて進路を変えた。
彼女の機嫌を損ね、またベッドを占領されては
コータも困るからだった。
