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ロリータ・コンプレックス  作者: 之


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18/18

(18/17) 彼女の秘密、

リナには秘密がある。

コータだけが預かり知らぬ秘密。



リナの母親は彼女を残し、男と共に蒸発(じょうはつ)した。



その男はリナの、たぶん本当の父親で、

コータは実は叔父(おじ)ではない。



ずっと抱いていた疑念(ぎねん)が、父親の死後、

母親の態度の変化で確信(かくしん)に変わった。



DNA鑑定(かんてい)は必要はない。

小学生でもわかる理屈だった。



リナの血液型はAB型で、

父親のヨースケは、叔父のコータと同じO型。

O型の親からAB型の子供はまず生まれない。

虫崎家と血の(つな)がりはなかった。



母親はリナが疑念(ぎねん)を抱いていることに気づき、

ふたり目を妊娠した母親は男との再婚ではなく、

失踪(しっそう)という最悪の形でリナを置き去りにした。



母親にとって、リナという娘は

はじめから無かったことにされたのだ。



失踪の原因は、母親の不貞(ふてい)を許さず、

彼女を拒絶(きょぜつ)した娘のリナにあったのかもしれない。



母親の失踪後、父親だったヨースケの祖父母が、

息子の忘れ形見であるリナを引き取った。



しかし本当の家族ではない後ろめたい気持ちが、

時折(ときおり)リナを不安にして眠れなくさせた。



叔父のコータは「不安はつきものだ。」と言った。

父親のヨースケにそっくりな声で言った。



亡き父親の言葉であり、

その不安こそ、リナの抱える秘密であった。



「コータって結婚願望ってあるの?」



「え? なに…?」



学校から帰ってきたリナに言われ、

コータは息を切らした彼女の様子に動揺(どうよう)する。



コータは最近、服装に気を使い始めた。



いつものダサいよれよれのパーカーに、

だぼだぼの(ゆる)いデニムパンツではなく、

ちょっとオシャレな服をネット通販で買っている。



それに高校時代のジャージを引っ張り出して、

庭に出て(なわ)()びも始めた。

腹を()らすだけでこれは続かなかった。



コータの変化は、ショッピングモールの

ケレスに行って以来(いらい)だったので、

リナは不審(ふしん)に思った。



「もしかしてまさか、もう結婚予定してる?」



「してませんよ。」



反応が少し不貞腐(ふてくさ)れ気味で、

(うそ)をついてる顔ではない。



コータは考えが表情に出やすい。



しかし、ケレスで名刺を渡した初恋の相手、

矢那津(やなつ)と連絡を取り合っている気配もある。



リナは(いぶか)しみ、自営業のコータが

(ひま)をしている日は無理やり外出に付き合わせた。



一緒に馴染(なじ)みの商店街に買い物に行き、

ケレスまで短いドライブし、ついでに映画を見た。



祖父母がいつもの旅行に出かけた日などは、

庭にテントを張り、ふたりでキャンプを楽しんだ。



そんなリナが秘密を打ち明かすのはずっと先で、

それはコータとちゃんと家族になる頃だった。





(了)


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