(14/17) 家族の秘密。
「コータってなにか秘密にしてる?」
ハンバーグをひとりでこねているコータに、
突然リナから質問が飛んでくる。
「…ありますよ。」
「なに? 教えて。」
「秘密ですから、教えませんよ。」
「えー!
家族に秘密はナシだってパパ言ってたよ。」
「それじゃあリナさんの秘密は?」
「教えるわけないじゃん。」
「…ですよね。」
彼女は矛盾に気づいていないのか、
コータは最初から諦めた。
「なんかないのー?」
「家族の間にだって普通に秘密は持ちますよ。」
「グランパとグランマにも?」
コータの両親はいまでも仲睦まじい。
お陰様でコータ自身、いまもこうして
引きこもりを続けていられる。
いまごろは温泉でも楽しんでいるのだろうか。
「ふたりは夫婦なので。どうかな。あちっ。」
「ふーん。やっぱないんだ。
あっ、いい匂いしてきたー。」
ハンバーグの中に火が通る間に、
ソースを別に作る。
料理は効率を考えなければいけないので、
慣れないコータはなにかと慌ただしい。
リナはそんな姿を楽しげに見て、
手伝ってくれる様子はなかった。




