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ロリータ・コンプレックス  作者: 之


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12/18

(12/17) コータの弱点。

「痛っ!」リナに指を()まれた。



「なにすんの! 変態! ケーサツ呼ぼっか?」



怒っている彼女にコータは首を振る。



「あの…大きな声、出さないでください。」



「だってあいつが悪いんじゃん!

 コータのことムシだとか

 ユーカイ犯って言ったし。」



「知り合いだから。冗談(じょうだん)です。」



「あのおばさん、店員なのに、

 なんなのあのアレ!」



バカにされ、怒りが収まらない様子のリナに、

コータはなんだか冷静になって、

いつもの口調でゆっくり話した。



「客だからって店員さんに対して、

 (えら)そうに振る舞えるわけじゃないです。」



「だってあっちがバカにしてきたじゃん!」



「僕はバカにされてません。

 リナさんはバカにされたら、

 同じように振る舞うんですか?」



「コー…おじさんのせいで、わたしが

 変な目で見られるのがイヤなの!」



リナはそれらしい言い訳を並べて、

そっぽを向いた。



リナの言う通り、コータは自分の姿を見て、

もう少し身なりを整えようと思った。



「ムシくん。」



「あっ。はい…。」



「これ、おつり、とレシート。」



「あ…、すみません。」



矢那津(やなつ)から離れるために、

釣り銭を受け取らずに

さっさと帰ろうとしたのだが、

意図(いと)とは逆に引き止められてしまった。



親戚(しんせき)?」



「…め、(めい)です。兄さんの。」



「そう、お兄さんの娘さんだったんだ。」



「なに、おばさん。パパの知り合い?」



「ううん…。

 おばさんって呼ぶのやめてもらえる?」



「おばさん、いくつ?」



「…にじゅぅ…5歳。」



「今年で28ですよね…。同い年なのに、

 なんでサバ読んだんですか。」



「アラサーおばさんじゃん。」



「リナさん。やめてあげてください。」



矢那津(やなつ)見栄(みえ)を張った自分を()じて顔を(おお)った。



「だってそうじゃん。」



「リナさんだって、いつまでも

 子供扱いされたらイヤですよね。」



「うん…。そうだけど…。」



コータ自身、いつまでも実家暮らしというだけで

揶揄(やゆ)されたり、発言を(さまた)げられた経験がある。



リナは自分に対しそんなことを言わなかったので、

矢那津(やなつ)揶揄(やゆ)した態度を責めた。



「すみません。お仕事の邪魔(じゃま)をしてしまい。」



「ううん。大丈夫。

 ムシくんまた来る?」



「え…?」できれば来たくはないのが顔にでる。



「じゃさ、連絡先教えて。」矢那津(やなつ)は押しが強い。



「はい…。」



コータは異性(いせい)の押しにめっぽう弱い。

ウォーターサーバの訪問販売が女性だったので、

勝手に契約をしてしまった失敗もある。



コータはこんなときのために、

財布に(しの)ばせた名刺(めいし)を取り出して

おどおどと渡した。



「コータ! はやく帰ろ。」



「じゃあ袋詰め手伝ってください。」



「にぇー。」



苦々(にがにが)しい顔を見せたリナだが、

コータの袋詰めの手際の悪さを

見るに見かねて手伝ってくれた。



「仲良しなのね。」



そう言うと矢那津(やなつ)は明るい笑顔を向けて

仕事に戻った。



彼女のせいで緊張(きんちょう)しっぱなしだったコータは、

店を出るころにはひどく疲れてしまった。


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