(10/17) 笑顔のリナ。
「おじさん、もっとオシャレしたら?」
「必要ないから。」
コータはいつものよれよれのパーカーに、
だぼだぼの緩いデニムパンツ。
ショッピングモールというのは
アラサーの独身男がこんな格好で、
少女を連れて歩ける場所ではなかった。
リナに指摘されてコータは恥ずかしくなってきた。
「わたしが見つくろってあげる。」
そう言って持ってきたのが、
派手な龍の刺繍の入った黒色のシャツで
いつものようにコータは笑い者にされた。
「似合わなーい。」
「それなら、持って来ないでくださいよ…。」
「えぇー、いいじゃん。次これ着て。」
「それより、ご飯はどうします?」
「なんか作って。」
「デリバリーじゃダメですか?」
「わたし、ハンバーグ食べたい。」
家ではあまり出てこない洋食の注文。
ハンバーグ程度の料理ならコータでも、
作れない気がしないでもなかった。
「あ、レトルトでいいですか?」
「ダメ。」
満面の笑みを向けられ拒絶された。
ふたりは1階のスーパーに寄り、
コータはレシピサイトを見ながら材料を調達する。
「ハンバーグは、なに肉?」
「もー。」
「お高い…。」
カゴに入れられた牛ひき肉の値段に目を疑った。
コータはあとでそっと鶏肉と変えておいた。




