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花の妖精  作者: ぱる
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出会い4


 私の返答にパッと笑顔になったイケメンを、長い前髪の隙間から恐る恐る見上げる。この人が助けてくれたんだよね。ここは社会人としてちゃんとお礼言わなきゃ。コミュ障を理由に逃げちゃだめよね。



 『あ、あの、、、。助けてくださったんですよね。本当にありがとうございました。』



何とか絞り出した私の蚊の鳴くような声にイケメンは微笑んで目を合わせようとしてくる。彼から私の目がよく見えていないのは分かっているけど、前髪を上げる気になれないのは許してほしい。初対面の人とちょっと話しただけだけど、私にしては本当に頑張ったのだ。



 『僕の名前はリト。森で薬草の採取をしてるときに君が木の下で倒れてるのを見つけた。酷く体調が悪そうに見えて、心配で僕の家に連れ帰ったんだ。あと、その髪ね。黒髪の子なんて初めて見たから動揺したよ。』



服装も見慣れないし、と付け加えながら手慣れた仕草で、飲み物が入ったマグカップを渡してくれる。恐る恐る口を付けるとスッキリした味の冷たい飲み物が喉を通っていくのを感じて、思わず飲み干してしまった。喉がカラカラだったし、すごく美味しかったから。



でも、黒髪の子を初めて見たなんて冗談かな?黒髪の人なんていくらでもいるし。取り敢えずリトさんの話は一旦聞き流すことにして、私も口を開いた。



 『見知らぬ私に親切にしてくださってありがとうございます。私の名前は古川 春。姓が古川で、名前が春です。ところで、ここは一体何処なんでしょう。』



 言葉は通じるけど、外国っぽい顔立ちのリトさんに一応名前の説明をしてから、いちばん気になっていたことを質問してみた。すると、リトさんはきょとんとした顔をしながらも丁寧に質問に答えてくれた。



 『ここはエカルト王国の南部にある森だよ。もしかして知らない?妖精の森とも呼ばれてて、結構有名なんだけど。』



 エカルト王国。アメリカでもフランスでもなくエカルト王国。聞いたことない。どうやらここは妖精が言っていた通り、異世界らしい。なんてこった。これからどうしよう。困った顔をして小さくため息をついた私を見て、リトさんはさらにきょとんとしていた。



 その後、時間を掛けながら私の事情について話すとリトさんはとてもびっくりしていた。そうよね、普通はこんな話あり得ないよね。こんなに事情を赤裸々に話しても良いものか最初はちょっと迷ったけど、結局リトさんを信じることにした。こんなに優しくしてくれる人を疑うのは気が引けるしね。もし騙されてしまっていたとしても、大人なんだし自己責任としよう。



 リトさんと話してわかったことは、この世界には妖精とか魔法とか、私の世界ではファンタジーとされていたものが普通に存在していること、異世界人は100年ほど前に現れたことがあり、それが最後のこの世界に現れた異世界人であるとされていること、黒はこの世界において最も尊いとされる色だということである。



 なんか新しい情報が多すぎて頭が混乱する。そしてそんな私に気がついたのか、続きは今度にしよう、と優しくリトさんは微笑んでくれた。しばらくは私の面倒を見てくれるんだって!リトさんはいつまでもここに居ていいよと言ってくれたけど、そんなわけにもいかない。でもその申し出は本当に助かるし、有り難い。なんせ私は今この世界では赤ちゃん状態だから。出来るだけ早く仕事を見つけて恩返ししよう、と心に決めた。






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