ダイナソープラネット
ある銀河の宇宙船内、二人の男が会話をしていた。
「今回はかなり遠くの銀河まで行ってみないか?」
「いいな、どの方角にする?」
「あまり行ったことがない方角がいいから、ざっくりB-12-345くらいでどうだ?」
「じゃあその方角で生態系がいそうな銀河をサーチしてみるか」
そう言って操縦席の男は目の前のモニターを操作する。
「見つけた。ここから約234光年先にいい感じの銀河がある」
「とりあえずそこに行ってみようぜ!」
「わかった」
再びモニターを操作し目的地をセットする。
すると窓から見える景色が突然、ぐにゃっと曲がったかと思うと急に目の前に青く丸い星が現れる。
「おお! この星は期待できそうじゃないか?」
「たしかにな、ちょっと待てよ。誰かがすでに着陸した可能性もあるから念の為に過去の履歴も調べてみるか」
目の前にある星をスキャンし、以前に誰かが立ち寄ったことがないか履歴と照合する。
「どうやら俺たちが一番乗りみたいだな」
「お、まじか。久々に当たりを引いたかもな! 早速降りてみようぜ!」
「まあそう焦るなよ。もう少しでこの星の環境が測定し終わるから」
それから約20秒後、測定完了の文字がモニターに浮かぶ。
「どれどれ、ふーんなるほど。環境的には俺たちが普通に活動しても問題なさそうだ、データによると高度な知的生命体はいないらしいがなかなか巨大な生命体がいるみたいだぞ」
「いいね、ワクワクしてきた! 早く降りてくれ」
再び船外の景色が歪む。そして次の瞬間、周りは不思議な形をした木々が生い茂るジャングルに変わっていた。
「なんでこんなジメジメしたところに降りるんだよ」
「文句言うな。お前が急かすからテキトーに降りたんだ」
「ま、いいかこれはこれで冒険している感じがあっていいかもな」
そう言って助手席の男が外へ出る。
「おい、装備は忘れんなよ」
「わかってるって。俺は今回のウエポンは近接でいく」
「じゃあ俺は遠距離でいくか」
二人は黒いアーマーを身につけ、一方は腰に一本の刀を差し、もう一方は背中に長いライフルのようなものを背負っている。
「それじゃテキトーに探索してみようぜ」
「ああ。見通しも悪いしとりあえずは飛行してこのジャングルを一気に抜けるか」
「おい! それだとせっかくの冒険が台無しだろ! 俺は下から行くからお前は上空から案内してくれ」
「しょうがないな、じゃあ上空からマッピングして後でデータを送る」
そういうと一人は音もなく浮遊し、あっという間に高さ50メートル以上はある木々の間を抜け、上空で停止する。
「なにかあったか?」
イヤホンから地上にいる男の声が聞こえる。
「特に何もないな、山と川くらいしかない。とりあえずマップを送る。東に10キロ行ったところに開けた場所があるからそっちに向かってみるか?」
「オッケー。俺はのんびり探索しながら行くから、マップにポイントしといてくれ。そこで合流しよう」
「わかった。あんまり無茶するなよ? 巨大な生命体が好戦的な可能性もあるから気をつけろ」
「この装備なら大丈夫だろ。まあ危なくなったら援護頼むぞ」
「了解。じゃあまた後でな」
そう言って上空の男は東の方向へ飛んで行った。
「巨大生命体かあ。どんなやつなんだろうなあ。とりあえず合流地点に向かって歩くか」
地上の男は東に向かって歩き始める。
「それにしても久しぶりにちゃんとした生命体がいそうな星を見つけたな。しかも巨大となるといよいよラッキーだ。もしかしたら結構稼げるかもな」
歩くこと数十分。茂みの中からガサゴソと音が聞こえてくる。
「お、何かいそうだな」
男は体勢を低くして音のする方向を見つめる。
しばらくして茂みの中から姿を現したのは体長2メートルほどの首が長い四足歩行の生命体だった。皮膚はゴツゴツした灰色で動きはゆったりとしている。
「これが例の巨大生命体か? なんだか拍子抜けだな。動きは遅いし、襲ってくる気配もない」
茂みから姿を現した生命体は木の上の方に成っている果物を夢中で食べだした。
「期待して損したぜ」
男が再び目的地へ向かって歩み出そうとした時。
ズシン……ズシン…
突然地面が揺れだし、遠くの方でバキバキと木が折れる音が聞こえてくる。
音のする方向では無数の、翼の生えた生命体が散り散りに飛び立っていた。
果物を食べていた四足歩行の生命体も食事をやめ、先程までとは打って変わってなかなかに俊敏な動きで走り出す。
「なんだあいつ。やればできるじゃねえか」
「それにしてもこの揺れはなんだ?」
バキバキと木々を薙ぎ倒す音は次第に大きくなる。
ギャオオォォーーーン!!!
突然、耳をつん裂くような咆哮とともに巨大な生命体が現れる。
「うわ!なんだあいつ! 厳つすぎるだろ!」
男から数メートル離れた場所にいる巨体は、全長10メートルはありそうだ。
ずっしりとした二本の脚で巨体を支え、前脚は後脚に比べて小さい。驚くべきはその頭部で、男を一口で飲み込めそうなほど大きく縦に開けられた口には20センチはあろう鋭い歯が無数に並んでいた。
「こいつはやばいだろ! どう見ても好戦的な顔だ」
男は腰に差した刀を抜く。その刀は刃渡り60センチ強で先から持ち手まで全てが真っ黒だった。
刀の主な材質はカーボンであり強度を増すために僅かに他の素材も混ぜられてはいるが基本的には時間が経つと分解される材質で作られていた。
「先手必勝だ。まずは様子見で斬りかかってみるか」
男は地面を蹴り、目にも止まらぬ速さで走り出し、一瞬で数メートル離れた巨体との距離を詰める。
「くらえ!」
巨体の頭部めがけて男が刀を振り下ろす。
いきなり目の前に現れたものに一瞬驚いた様子の巨体だったが堂々と刀を正面から受ける。
ガキンッ!
「堅ッ!」
攻撃を弾かれた男は空中で体制を崩す。
そこに間髪入れず巨体が大きく口を開けて噛みつこうと迫ってくる。
「おっと」
男は空中で体勢を整え浮遊したまま巨体との距離をとる。
「ここならどうだ!」
そう言って一気に下降し巨体の下に潜り込み、回転しながら腹部を斬りつける。
バシュッ!
「入ったか」
そのままの勢いで巨体の下をくぐり抜け着地する。
「斬れたけどちょっと浅かったか」
ブォン!
巨体の尻尾が、ものすごい勢いで男の右側からせまる。
「やべ!」
男は初めその尻尾を避けようとしたが、間に合わないことを察したのか刀を盾にしてそのまま攻撃を受ける。
バキッという音とともに刀は真っ二つに折れ、尻尾の攻撃をもろにくらった男は数メートル吹き飛ばされて大きな木の幹に叩きつけられる。
「ガハッ…痛えなあ、巨体のくせに攻撃速度が早い。あの重量であの速度、なかなか強力な攻撃だな」
「アーマーがなければ死んでたか」
男は素早く立ち上がり、追撃を警戒しながら巨体との距離をとる。
「ウエポンも折れたし、ここは一旦引くか」
そう言って男は巨体に背をむけ目的地に向かって走り出す。その後ろから巨体がバキバキと木を薙ぎ倒しながら追いかけていくが男には追いつけそうもない。
「こいつ移動速度は大したことないな。重すぎてスピードは出ないみたいだ」
「だけどパワーと防御力はなかなかいいな。それにヴィジュアルがかっこいい」
「こんなのがいっぱいいるならこの星はあたりだな」
そんなことを呟きながら男は一気に空中まで浮遊し東へと飛んでいく。
「さてと、合流地点はこの辺りだが、あいつはどこだ?」
男は空中で停止して辺りを見渡す。
「よく見るとかなりの種類の生命体がいるみたいだな。さっきの奴は見当たらないか」
そこへ背後から猛スピードで接近する影があった。
「後ろだ!」
イヤホンから声が聞こえる。
その声に反応して男は身を翻し、背後から迫る影の追突を間一髪で避ける。
「あぶねえ」
影の正体は7から8メートルほどの大きさがあり、巨大なクチバシと翼を持った生命体だった。その生命体は旋回して再び男に向かっていく。
「どうにかしてくれ! 今ウエポン持ってないんだ!」
「じっとしてろ」
イヤホンから聞こえてくる声は落ち着いていた。
その直後、男の横を一本の光が通過し飛行している生命体を貫く。光に貫かれた生命体は勢いを失いそのまま落下していった。
「いやあ、助かったぜ」
先に合流地点に到着していた男が近づいてきて話しかける。
「なんでウエポンがないんだ?」
聞かれた男は先程の巨大生命体との出来事を説明する。
「なるほど、いい個体を見つけたようだな。お前がここに来るまでこの辺りを探索していたんだが、この星はどうやら当たりみたいだ」
「お! 本当か?」
「ああ、大きな水溜りを見つけて少し潜ってみたんだが、20メートルはありそうな巨体で泳ぐやつに突然襲われた。他にも小高い山だと思っていたものが、近づいてみると動き出したり」
「すごいな! 俺が戦ったやつも、さっきのでかい飛行生命体もなかなか人気が出そうなヴィジュアルしてたし。ついに、いい星を見つけたな!」
「そうだな。この星で一稼ぎできそうだ」
「早速帰ってこの星のことを伝えようぜ!」
そうして男たちがこの星を去って数日後。
数百、いや数千の宇宙船が青い星に着陸していた。
船から降りた人々は皆黒いアーマーを身につけておりそれぞれが真っ黒な刀や銃、槍、斧といったさまざまな武器を携えたいた。
彼らの目的は巨大な生命体を標的にした娯楽としての狩りだった。
ほとんどの生命体は彼らによる狩りによって個体数を減少させ、僅かに残った個体は全て捕獲され彼らの星へと持ち帰られた。
それから6600万年が経った青く丸い星
「それでは、テキストを開いてください」
「前回の授業で中生代の地球では恐竜という多種多様な生物が生まれまたというお話をしました」
「恐竜は2億3000万年前から6600万年前、おおよそ1億7000万年という実に長い期間、地球上に存在していました」
「人間の歴史は2000年ほど続いていますが、そのことを考えると恐竜の時代がいかに長かったかを思い知らされますね」
「ではなぜ、この地球上を長きに渡って支配してきた恐竜が絶滅してしまったのか」
「それには諸説ありますが、一番有力なのは巨大な隕石の落下による影響で絶滅した。という説ですね」
青く丸い星から234光年離れた銀河。そこには巨大な生命体が支配する星があった。
お読みいただき誠にありがとうございました!
ダイナソープラネットというタイトルが最後に引き立つ作りにできたかなと自負しております。
初めて少しだけ戦闘シーンに挑戦してしてみましたが、難しいですね笑
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また、いくつか短編を投稿しておりますのでそちらにも目を通していただけるとありがたいです!