文学少女は今日も引きこもる。
「あれ?」
冷凍庫に入れて置いたおにぎりが残り2個しか無い。
って事は明日から仕事か。
7日前パート先のスーパーでクラスターが発生、勤めていた正社員とパートやアルバイトの全員が検査を受けさせられる。
私は陰性だったんだけど念の為って言われて1週間の自宅待機を要請された。
スーパーも消毒が済むまで休業するって言うんで要請に従う事にする。
本社の社員や店長には渋々応じるって態度をとったけど、内心では万歳三唱してた。
だってさ、7日間読書三昧の引きこもり生活をしていても怒られないんだよ。
それで勤めているスーパーからの帰路、ライバル店のスーパーでおにぎりを42個購入して帰宅、おにぎりを冷凍庫に放り込んだって訳。
一昨年の暮れ亡くなったプレッパーを気取っていた父が溜め込んでいた、腐る程ある米等の食料品が倉庫にあるんだけどいちいち作るのが面倒なのよ。
同じ理由で破棄してないの。
それで文学少女の私は…………、父が死んで1年以上経つのにまた父の突っ込みを待ってしまった。
文学小母さんの私は書庫から本をゴッソリと持ってきてさっきまで読書三昧してたの。
明日から仕事かー。
お風呂に入って気持ちを切り替えよ。
お風呂が沸くまでテレビでも見ているかとテレビを点ける。
え? テレビを点けて映った画面には、「現在全国に外出禁止令が発令されています」のテロップが流れていた。
チャンネルを変える。
傾いたカメラが薄暗いスタジオを映し、奥の方で椅子に縛り付けられた人? が前後に身体を揺すっていた。
次々とチャンネルを変える。
「軍や警察の指示に従って行動してください」等のテロップが流れているだけ。
え、エエー!
引きこもっている間に何があったの?
窓の外から、タンタンタンって感じで銃声が響いて来た。
窓際に近寄り5階建ての倉庫兼住居の5階の窓から周囲を見渡し、ついでに倉庫の前の道を見る。
?
道をヨロヨロと歩く血塗れの人らしいもの、あれって人間じゃ無いよね?
7日前までは新型肺炎が蔓延している世界だったのに、今はゾンビが街の中を徘徊している世界になっている。
7日間の間に何があった?
あ! でも、外に出られないって事は、読書三昧の引きこもりを続けられるって事じゃない。
食料や水に生活必需品は1階2階3階の倉庫にギッシリ詰まっているし、4階5階の書庫は本で埋まっている。
私は読書三昧の引きこもり生活を続けるため風呂を沸かすのを止め、書庫に読みたい本を取りに行った。