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バルカの心。

「大丈夫。レティーナ、泣かないで」


 そんな声が聞こえる。幻聴? それとも、過去の記憶が見せるまぼろし?


 視覚はほぼゼロ。でもまだ身体の感覚は残ってる。あたしまだ生きてる?


 ——漆黒に包まれて意識を失ってただけよ。大丈夫、まだ完全に取り込まれたわけじゃ無いから。


 アリシア。


 あたし、まだあたしのままなんだね……。良かった……。


 ——そうだよレティ。諦めないで。なんとかここから脱出しよう。


 カイヤ! 気がついたのね! 良かった……。


 ——ティアとアルミナはまだ意識が戻ってないけどね。それよりごめん。不甲斐なくて……。


 ううん。カイヤが無事で嬉しいわ。


 ほんと良かった。うん。でも。あたしが負けちゃってこのままバルカに取り込まれたらみんなも……。


 ダメ、ぜったい。そんなのダメ。


 ねえアリシア、ここって……?


 ——ここはバルカの心の本質? そんな漆黒、だと思うけど……。たぶんレティーナの聖結界のおかげ?でなんとか取り込まれずに済んだんじゃないかな?


 はう。


 あたしの身体の周囲にわずかに感じる聖結界の残り香。バルカの身体の中にた叩きこんだそれのおかげで時間稼ぎができてるってこと、かな?


 ——そうね。たぶん。そん感じ。もしかしたらそれだけじゃないかもだけど……。


 え? どういうこと?


 ——感じない? さっきからあなたに寄り添ってるあたたかい優しい気。


 ああ。


 さっきの声。


 そうだ。やっぱりあの声。大聖女さまの声?


 子供の頃のあたしが寂しくて辛くて泣いていた時に声をかけてくれた大聖女様の。


 そんな優しい声。


 気のせいじゃ、ない?


 あたしの身体を取り巻く聖結界、そしてそのまた外側でゆったりとあたしを包んでくれている気配。優しい大聖女さまのそんな気を感じる。


「大聖女さま!」


 あたしは思わずそう大声を出して呼びかけてた。




「ごめんなさい、レティーナ。わたくしが急に居なくなってあなたにも寂しい思いをさせたみたいね……」


 ああ、今度こそ間違いない。幻聴じゃない。大聖女さまの声が聞こえる。


「大聖女さま! 大聖女さまこそご無事なの? バルカに取り込まれてしまったのかと思って……」


 バルカはそう言ってたし。でも……。


「ごめんなさいね。レティーナ。わたくしは自分で望んでここに居るのです」


 はう?


「どういうことですか!? 大聖女さま!」


「バルカの復活が最早止められないと悟ったわたくしは、彼の心を封じようと考えました。魔王のチカラはその感情によって暴走するのです。心を、感情を封じることでそのチカラを抑えられないか、と。彼の心に入り込む事で、わたくし自身が封印となる事で、バルカの心、感情を封じることができるのではないか、と」


 ——ああ。だから。


 ——バルカの心から憎しみが消えて居たのはそういうことだったのね。


「アリシア? レティーナの中に居るのですか?」


 ——ええ。でも、失敗よ? サンドラ。


 ——バルカは心が封じられて居ても、この世界を破壊しようとしているわ。

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