薄っぺらいな。
再びバルカの姿をとったそれにあたしは斬りかかる。
諦めるわけにはいかない。
この世界を破壊されるわけにはいかない!
「この世界に住む人はみな生きてるの! 勝手に壊したりして良いものじゃないよ!」
あたしは手に持ったドラゴンバスタードを真横から薙ぐように滑らせる。
ガキンとやはり剣で受け止めたバルカ。
「薄っぺらいな。お前」
「なに!」
「俺にはわかるぞ! お前の心は他人のことになど興味もないのだろう?」
弾かれる剣。一歩後退り、そしてまた上段から斬り下ろす。
「頭で、理屈で、ダメだと言っているだけではないのか!?」
バルカはその剣を片手で受け止め。
あたしの剣はいとも簡単に弾かれる。
「軽いな! 言葉も力も何もかもが軽いぞ!」
う、くっ!
言い返せない? ううん、ダメ。負けちゃ、だめ。
「壊して、どうするっていうのよ!」
左手のシルヴァ・ファングを起動。顕現した狼ヘッドの口がガッと開き、エネルギーが収束する。
「シルヴァ・バーストー!!」
氷の嵐が吹き荒れバルカを襲う!
「清浄な世界、穢れのない世界を再生するのだ。それが俺の魂に刻み込まれた使命!」
左手一本でその嵐を止め、消し去るバルカ。
「帝国は……、平和じゃない。なんで今更その平和な世界を壊そうとするのよ!」
バルカの剣が迫る。あたしはその剣筋を受け流すように左に避けた。
「多くの人間の犠牲の上にある、それが、平和か!?」
「少なくとも戦争がないだけ平和だわ!」
ステップを切り替えてそのまま剣でバルカの喉元を突く。
あたった? と思った時にはそこにバルカの姿は無かった。
「人は弱い!」
背後から剣圧!
瞬時に前方に転がるように避けるあたし。
「弱い故に群れる!」
あたしが居たその場所に、刺さる剣先!
「群れるから、争う!」
ザク! ザク! ザク! っと床に刺さる剣を避けながら転がるあたし。
「戦いの上の平和なぞ、次の強者が現れるまでの仮初に過ぎぬ!」
薙ぐように這うバルカの剣を避け背後にジャンプするあたし!
「そんなの! じゃぁどうするっていうのよ!」
右手のドラゴンオプスニルを空に掲げ、あたしは無数のドラゴンスレイヤーを生み出した。
「アターック!!」
右手を振り下ろし、その無数の剣を魔王バルカに向かって一斉に射出した!
無数の剣が突き刺さった剣山の中から。
ゆらゆらと炎の塊が現れた。
少しは、ダメージ与えられた?
「そもそも、人には文明など必要無いのだ。なにも俺は、生きるための戦いまで否定しているわけではない。国同士のレベルでの争いには恨みが残る。怨恨や嫉妬、恐怖、そうしたものを無くしたいのだ」
ゆらゆらと揺れる炎。
「あなたは、神にでもなるつもり?」
「ああ。カッサンドラをも取り込んだ俺は、この世界の神になるのにふさわしい。真の魔王、真皇となってこの世界を清浄な世界へと再生する!」
え? カッサンドラさまって、サンドラさま? 大聖女さまの事!?




