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バアル。

「あなた、本当に魔王バルカ、よね?」


 アリシアの違和感があたしにも伝わってくる。


 バルカ、ではあるとおもうけれど何かが違う、言葉には言い表せないそんな感覚。


 なんなんだろう、これは。




「ああ。俺はハンニバル・バルカ。今は亡きバアル王国の騎士団長の息子として生まれた。そうしたキオクもちゃんとあるよ」


 そう語る彼の表情はとても憎悪にまみれた魔王とは思えない。一見するとアンニュイな雰囲気を纏った青年。そんな。


「魔王、なんだよね?」


「そうらしいな。俺の前に現れたグリフォンがそう言っていた。かつてこの世界を滅ぼし再生しようとした高潔なる魔王なのだと。俺のために魔王石を集めてくると言っていたが……」


「魔王だったキオク、無いの?」


「ああ。人であった頃の想いも、どこかに隠されているのか。帝国に、この世界の不条理に怒っていたキオクはある。しかしその時に感じていたはずの感情がわからない……」


 はう。


 どうしよう。これ、なんだか無害っぽくない?


 ——わかりません……。でも、バルカは危険です。それは変わらない……。


「で、あなたはこんなところで何してるの? 今までここを探索に来た人たちはどうなったの?」


 バルカは顔を右手で押さえ、何かを思い出すように。


「ああ、俺はここで静かに過ごしたかっただけだ。虫除けに置いた魔獣を避けた者達は未だ迷宮を彷徨っている筈」


 ——ああ。フロアボス部屋を避けて戻ると迷宮の奥深くに迷い込むって事ね。ボス部屋が唯一の正解ルートになってたってことなのかも。あれはバルカのレイスで出来た、出口が無い迷宮になっていたのでしょうね。


 そっか。


「その人たちを解放しては貰えないかしら?」


 ダメ元でそう聞いてみる。っていうかこの人、悪い人に見えないの。どうしてかな?


「ああ。そうだな。あれらは“外”に出しておこう。いつまでももぞもぞ這い回られるのも気持ちの良いものではないしな」


 あう。そっち?


「ありがとう。ハンニバル、さん? ってお呼びすれば良いかしら?」


「ああ、君は……」


「あたしはレティーナ。っていうか随分と想像と違いすぎるのだけど、あなた、これからどうされるの?」


 魔王の気は相変わらず刺さるように噴いている。その気の嵐に当てられてアルミナやティアはもう限界、だ。


 カイヤも人の姿を保っていることができずに、小さい黒猫に戻ってしまっている。


 背後の三人を庇い前に出て、あたしは彼、魔王バルカとの決着を早急につけなければ。と、少し焦っていた。

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