構ってられないよ。
元からあった地下の空洞、魔王の遺体を安置していた場所までは中庭から隠し階段を降りていく。
あたし、カイヤ、ティア。そしてアルミナさん。その四人で。
このアルミナさん、聖女宮ではけっこう偉い人だったかな。聖魔法はもちろん一級品だけど若い時は騎士団に付き添い魔獣退治とかもしてたって聞いたことがあった。
はう、もうお年を召してるってわけでもないよ?
いま、まだ三十路になっばかりくらいだったかな。まだまだお若いです。
とにかく経験豊富な実力者。こういったお仕事いいつかるくらいだから現大聖女様にも信頼されているのだろう。
「ミサカは……、聖都からの追放処分になりましたよ……。さぞいいきみだとでも思っているんでしょうね……」
背後からぼそっとそんな声が聞こえた。
はうう、怖いよこの人……。
ミサカって、聖女長様の事だよね?
はうう……。
っていうか聖女長様が追放されたのってあたしのせいにされてるの? ひどい。
「あたしには……、関係無いですよね……?」
そもそも追い出されたのはあたしなのに。どうしてこんな事言われなくちゃなんないの!
「関係無いって! あなたのせいじゃなかったら誰のせいだっていうのよ! あなたが聖王様に取り入ったからでしょう?」
「あたし、そんなことしてない!」
「前の聖女長様の時もそうだった。あなただけが贔屓されて。どうして? あなた、なんなのよ!」
「ねえ、あんた、それ以上レティシアのこと悪くいうとあたい黙っちゃいないよ!」
薄暗い階段を降りながら、こんなところで興奮して怒り出したその聖女アルミナに、ティアが振り返りそう啖呵をきる。
黙り込むアルミナ。でも、その目はキッときつくあたしの方を睨んでた。
「ねえ。こんなところで喧嘩売りたいなら買ってあげないこともないけど、あたしもうそんな事に構ってられないんだ。邪魔をする気なら置いていくよ?」
「そんな事って何よ!」
「あたしはもう聖女宮に戻る気持ち無いしあそこでなにがあろうと気にもしない。あたしをいじめてた聖女長さまにだって文句はあったけど恨んだりとかして無かった。でも、魔王バルカを放置しておくことはできないしそんなことしてこの世界がどうにかなっちゃうのは嫌なんだ。だから……、あなたがそれを邪魔するのなら容赦はしない。あたしに逆恨みするなら好きにしてくれればいいけど、邪魔をするなら話は別だ」
黙り込むアルミナ。あたしは尚も続けた。
「このダンジョン探索に協力する気が無いのなら、あなたはここで置いていくよ。協力する気が少しでもあるなら文句言うのは後にしてくれない? さあ、どっちを選ぶ?」
きつくこちらを睨むアルミナ。
あたしも負けじとじっとアルミナの目をみて。
「協力する気もないのにただ後を追ってくると言うのなら、今後あなたのことは感知しない。もし危険な目にあったとしても無視して先に行くだけだけど、いい?」
ふっと下を向いた彼女。
キッと向き直って。
「協力、する。ううん。させてください。それが大聖女様からわたしに与えられた任務だから……」
アルミナはなんとかそれだけ、絞り出すように言葉を紡いだ。
まあ悔しいのだろうけど。しょうがないかな。




