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紅い魔王石。

 突然あたりが開けた。


 樹々はここまで。あとは裸の岩肌が剥き出しの頂上が見えるだけ。


 登っていくと、そこには石造りの小さな祠があった。


「ここ?」


 ——ええ。ここの地下です。


 って、どうやっていくの?


 ——その祠に手をかざしてみてください。


 祠の前に立ったあたし達三人。


 ——千年前の戦いで割れて砕け散った魔王石のカケラはそれが飛んで行った各地で祀られたのです。それがまだ残っていれば……。


 はうう。千年前の祠なの? これ。


 石が積み重なっただけにも見えるそれに右手をかざす。ドラゴンオプスニルが鈍い色の光を放ち、そして。


 転移した? のか、あたし達はそれまで居た筈の山頂ではなく、周囲には黒い石英の様な艶のある壁がぼんやりと光るそんな大きな空洞の中にいた。


 中央に浮かぶ紅い石。あれが魔王石?


 ——そうです。あれがそう。魔王石のカケラです。


 その紅い石はまるで重力とか関係が無いとでも言いたげに、空中に浮かび。


 この空洞のちょうど真ん中に、それあたしたちの目の高さ付近、に、ぼんやりと浮かんでいた。


 手にとっても大丈夫かな。なんだかビリっときそうでちょっと怖いかな。そんな風にもおもうけど、ここは勇気を振り絞らなくちゃ。


 ゆっくりと近づいてその魔王石を掴んだあたし。


 って、おかしい。魔王石の周囲にはなにか透明な壁の様な物ができてて目に見える魔王石自体に触ることが出来てない?


 ——うーん。封印、ですねえ。


 はう、骨折り損?


 封印されたこの魔王石のカケラ。今までにもこんなふうにここに誰かが来ることはあっただろうに、千年もの間誰にも触れることができないままここにずっとあったって事なのかな。


 封印を解く方法は、何かないの?


 ——レティーナ、貴女が本来の聖魔法が使えるのならこの封印は解ける筈なのですけど……。


 はうう。


 借り物のマナを使った魔法はやっぱりあたしの中から出したマナを使った聖魔法とは少し勝手が違うのかな?


 ううん。でも。


 きっとキュアは同じな筈。


 それに。


 あたしが何も言わなくとも、あたしの手にそっとその手を重ねてくれたカイヤ。


 ありがとうカイヤ。


 うん。彼の中にある魔法結晶。


 その力を借りればきっと……。





 あたしの身体から金色の粒子が舞い上がる。たぶん、キュア達が反応してくれている。


 魔王石のある場所を両手で包み込む様に触れる。


 その手が触れたところから、透明な筒状の結界による壁が、だんだんと溶ける様に消えていく。


 ああ、これなら。


 そして。最後の壁が崩れ去る様に溶け、あたしの手の中に収まった魔王石。




 その魔王石をぎゅっと握った時。あたしの中に滑り込む様に流れ込んでくる何か、を、感じた。

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