魔王の器。
ぐぐーっとその龍の右手が伸びてあたしの目の前に展開している魔法陣、次元シールドを掴む。
パリン
そう音がしたような気がした。実際には音なんてなかっただろうけどそんな。
ぎゅっと掴んだだけであたしの次元シールドは弾けて消え、そこには巨大な龍の手だけが残った。
うーん。やっぱりレベルが違う。
今のあたしが戦っても勝てそうもないか。
《ふふっ。そういじけたものでもないよ。お前はまだ満たして居ないのだろう?》
へ?
《みたところお前の魂はまだほぼ空に近い。マナを満たせ。そうすればまだまだ強くなるだろうさ》
え? どういうこと……。
《我は黒龍。黒龍ブラド。このノーザランドを守護する者だ》
その顔には威厳が満ちていた。うーん、龍のドヤ顔?
《レヴィア様はここにはおられぬ。今は確かベルクマールのはず》
え?
《バルカめが蘇りかけていたようだったのでそれを阻止するため向かった筈だ》
「バルカって……、魔王バルカですか?」
《魔王などと片腹痛い。バルカ如きが魔王などと、あれは影にすぎん》
「でも……。千年前に封じられた魔王はバルカって名前だったのでしょう?」
《それはそうだ。今もまだ奴めの中に魔王のチカラの大半が眠っておる。レヴィア様はそれを憂いていたのだ》
はう。
《まあ人間にはわからぬだろうがな。もともと本来の真皇はレヴィア様なのだから》
えーーー?
どういうこと!?
《しかし興味深いなお主の魂は。そこまで広いレイスの持ち主がまさか人にいようとはな。いや、まさか、お主は器か?》
え? 器?
《まさか! カッサンドラの仕業か! あの小娘がまたしても暗躍しておるというのか!》
え? カッサンドラって……。
ベルクマールの創始者に降嫁したっていう大預言者の?
《あやつがまたも何かを企んでおるというのか!? であるとすると、お主はカッサンドラによって生み出された器であるということか……。ならばそのレイスの広さも納得なのだが……》
「もう! 一人で納得なさらないでください! あたしの事、何か知ってるんですか?」
もうさっきから一人で喋って一人で納得してるこの黒龍さま。いい加減もっとわかりやすく説明してくれないかな!
に、しても器って。
確かに先代大聖女様のサンドラ様はあたしの事をそう呼んだっけ……。
《すまぬな。我もそなたの事を知っておるわけでは無い。ただ、器をカッサンドラが産んだのであれば、その目的は一つだ。魔王のチカラをその器に納める事。その為でしかあり得ぬ》
はい?
《お主は魔王の器だという事だ》
え? なんで? どういう事!!




