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空っぽのうつわ。

 一晩そこで過ごした後明け方には合流してグノープルに向かった。


 結局あたしたちの馬をケルタルのおじさんたちに貸してあげて。そんでもってあたしたちの馬車はあたしがレイスに収納した。


「一体どれだけ収納できるんだお前さんの収納魔法は!」


 ってモリノークさんもびっくりしてたけど、笑ってごまかした。


 まあね。馬車一台分収納できるっていう人にはあたしもまだ会ったことが無いしね?


 探せばそれくらいできる人もいるんじゃ無い? って思うけど。


 ほんとはあたしの収納はまだまだ余裕なんだけどそれは話さないでおいた。これ以上驚かれたくないしね。


 それに、普通の人ってどうやらレイス自体もそんなにスペース広くないのかも知れない。


 あたしが特別? なのかな。


 大聖女様はいつも「あなたは特別なのよ」って言ってたけど、その時はまあよくはわからなかったけどほんといろいろ他の人と違うみたいでちょっと驚いている。


 レイスのスペース。


 あたしの中のインナースペースって言ったらいいかな。


 そんなインナースペースがあたしは他の人より広い? らしい。


 空っぽだったのに広いってすごく皮肉だけど。


 でもそのおかげで大聖女様の魔法陣や魔法術式のキオクはすべてあたしの中に書きこまれたし、それにこんなふうにいろんなものを入れてもまだ余るだけの広さがあるの。



 大聖女様が一度だけ口にした言葉。「うつわ」、と。


 あたしのことを、そう呼んだ事があった。


 言い得て妙かな。なんでも入るうつわって事だよね?


 もしかしたらってそう思った事もあるけど、大聖女様にとってあたしってただの道具だったんじゃないかって。


 今にして考えるとそんな風にも思えてくる。


 聖女宮にいる時のあたしって、なんだか人間味が無かったなぁとか。そんな風にもね。


 こうしていろんな事を楽しいとか嬉しいとかそんな風に思う事ができるのって、ほんと素敵だなって。


 そんなことも思うんだ。




 あたしとティア、そして猫の姿に戻ったカイヤは馬車隊の馬車に同乗させてもらった。


 道中モリノークさん達と打ち解けていろんな話をするうちに、彼らの耳の話も解決した。


 どうやらあの風土記にあった、


「黒髪を常に頭の上でお団子のようにまとめている姿が特徴で、それも耳の上に二つ括るのが成人の証だという独特な風習があった」


 っていうはそのまま言葉の意味通り。


 ただしその耳っていうのがもともとまあるいくまさんみたいな耳だったってだけで。


 成人男性はその耳を隠すようにその上に髪を結っているって意味だったの。ほんとびっくりだよね?


 ケルタルの人が屈強で毛深いのも熊の獣人の一族だからこそで、そもそもケルタルっていうのは彼らの言葉で大自然の勇者を意味する言葉なんだって。


 特に、冬の雪山で勇猛果敢に立ち上がる勇者。そんなイメージがあるらしい。


 うん。モリノークさんなんかぴったりだね。




 あたしたちは数日グノープルで歓待されたのちそのまままた北へと旅立った。


 紅い街道はまだまだ先まで続いているらしい。できればこのまま何事も無くノーザランドまでたどり着けるといいな。そんな事を考えて。

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