命を燃やしているような。
にゃぁ
っと声をかけられて足元を見ると、黒猫の姿に戻ったカイヤがドラゴンオプスニルを咥えてそこに居た。
ああ無事だったのねと抱き上げて頬擦りする。
「ありがとうね。拾ってくれたのね」
いつのまにか落としてしまっていたのかな。
——よかったレティ、君が無事で……。
——君の身体が光りだして結界が膨らんでいった時、ほんとボク心配したんだ。なんだか命を燃やしてるような匂いがして。
ごめん、無理し過ぎたかも。もう大丈夫だよ。この人が助けてくれたから。
——っていうかそいつ、誰?
うん、ちょっとキオク無い。誰だろう?
あらためて彼を見返してみるけどほんとうに記憶、ないよ。でもあたしの名前知ってたよねこの人、なんで?
「あの、ほんとうにありがとうございました。あなたが回復薬を飲ませてくれなかったらあたし、ちょっと危なかったかもしれなくて……」
あのまま身体が冷たくなってどうかなってたかも知れないと思うとほんとふにゃぁ。
「ああ。君が使った聖魔法は守護聖獣のチカラを借りなければ危険だからね。もう二度と一人であんな大魔法使おうとしたらだめだ。サンドラもそう教えた筈だが……」
はう? 大聖女様を知ってる人? この人……。
「君のマナが膨らんでいくのを感じて王宮から飛んできたんだ。間に合ってほんとよかったよ」
はう。
「あう。ありがとうございます……。ではあたしはこれで……」
あたしは少しあとずさって。なんとなく逃げなきゃってそう感じて……。
もうさすがに王宮とか聖女宮とかと関わるのは嫌。
レティシアの時のあの怒りは今のあたしには無くて。逆に、もう二度と関わりたくない、とか思っちゃってる。
逃げよう、カイヤ。
——うん。レティ。
あ、そうだ。
「えっと。あなたが王宮の関係者ならこれを。これだけの高濃度の魔法結晶ならきっと魔避けの助けになる筈ですから」
え? っという顔をしたその彼にあたしは魔法結晶を手渡すと、そのまま踵を返し走り出した。
「まって! レティーナ!」
呆気にとられたのか追いかけるのに一瞬遅れた彼。
あたしはそのまま公園の中を走り抜け建物の陰に隠れるとドラゴンオプスニルを右手にはめる。一瞬で変わる姿。そのまま龍の翼を生やして飛び上がる。カイヤを抱いたまま林の隙間、建物の隙間を縫うように飛ぶと、もうさすがにさっきの彼の姿は見えなくなった。
建物の屋根の上で身を隠しながらあたりを探ってみるけどどうやらもう大丈夫そう?
——大丈夫。なんとかまいたみたいだね。
うん。じゃぁ、宿に戻ってティアと合流しようか。
事情は大体わかったし今の聖女宮に聖都の結界を維持することが出来ていなかったこともわかった。
きっとそれを咎められた聖女宮の人たち、その原因をあたしのせいにして誤魔化そうとでもしたって事なのかな?
ほんと腹が立つけどもういいや。
それに。あの魔法結晶があれば少しは魔除けの役に立つ筈。
あれだけの魔も浄化できたんだし少しは時間稼ぎもできるでしょ。
——あいつはまだ生きてるけどね。
あいつってあのキメラだかグリフォンだかのあれ?
——うん。あれはきっと魔王のカケラ。魔王から産まれた魔だよ。あれはきっとまた来る。その時までにボクらももう少し……。
うん。ちょっと考えないとね……。
できればレヴィアさんにもう一度会いたい。
聞いておかなきゃいけない話があるんだ。あたし、きっと。
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このお話も10万字くらいをめどに終わるよう、そんな感じで書いてます。
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