転生少女、と、魔獣グリフォン。
「じゃぁコルネリアを助けに行かなくちゃ、ね」
と、リーザ。
「でも、どうやって……」
「ほら、サーラならひょいっとコルネリアの居場所まで転移できちゃわないの?」
「流石に……、難しいです。亜里沙ちゃんの所ならともかく……」
うーん。
わたし一人なら浮遊と風の魔法を使えばもしかしたら高速移動は可能かも?
そう思い至ったけど、どうしよっか。
《あたし達単独なら、なんとか追えそうだから、行ってみようか?》
「うん。ナナコの言う通り。わたしだったら空中浮遊と風の魔法でなんとか高速移動が可能かも?」
「えー。アリシア一人じゃ心もとないよ」
「ダメですよー。亜里沙ちゃん一人でなんて危険過ぎます」
《もしかして、さっき飛んで行った魔王のカケラの匂いの事か? それならば我が皆を運ぼうか?》
「え? レヴィアさん空飛べるの?」
水の中から出てきたからてっきり水竜の類かと思ってた。
《こう見えても我は空を飛ぶことも出来るのだよ。どれ》
レヴィアはわたしたち三人を乗せるのにちょうどいいサイズの小型ドラゴンに変化し、
《我の姿は一つではない。さあ皆でアレを追うぞ》
そういうとちょっと笑顔を見せた。
ドラゴンの笑顔。なんだかかわいい? かも。
「ありがとうございます!」
「ありがとうレビアさん!」
《いいの? レヴィア。ありがとう》
「ありがとうございますレビアさん! あ、背中に鞍? みたいのもついてる?」
ふわっと浮遊して背中をみると其処にはわたし達が腰掛けられるよう馬の鞍みたいのまで用意されてた。
《その方が座りやすいだろう? さ、遠慮せずに乗るがいいよ》
「「「ありがとうございます!」」」
リーザとサーラが乗るのを手伝って、わたしもふわっとレヴィアの背中に座ると、
《では行くぞ、しっかりつかまってるのだそ》
ぶわっと空中に浮き上がるレヴィア。
どうやら翼はあまり関係がないみたい。これも魔力? 魔法?
わたしの空中浮遊と似てるのかもしれない。
そのまま急加速するレヴィア。
風もあまり感じない。
景色がくるくる後ろに流れていくのがすごく綺麗だった。
レヴィアさんはまっすぐ飛んでいるけど、そんなにはっきりわかるの?
……魔王のカケラの匂い、と言っていたよね。あたしにもよくわからないけど同族だからわかるのかな?
うーん。
わたしも近くならわかるような気がしてたけど、これだけ離れてるとちょっと何も感じないかな。
「闇雲に探すのは大変でしたから。レヴィアさまに手伝って貰えて助かりました」
《はは。それは何よりだ》
「うん。わたしたちだけじゃ探しきれなかったかもだから。ほんとありがとう」
《我は魔王の僕だから、な。貴女の助けになったのなら僥倖だ》
青い空、白い雲。空気の流れが見えるよう。
わたしたちの居る場所はフードでも被っているように全然風が当たらないので助かってる。このスピードの風圧まともに当たったらそれだけで身体がどうにかなっちゃうかもだし。
前方に見える山。灰色の岸壁が剥き出しになっているちょっと不気味な山だった。でも。
ああ、あそこだよね。
そう感じていた。
……あそこだねぇ。
「間違い無いですね……」
リーザだけキョトンとしてる。
「あそこにカケラの魔獣が居る。間違いないよ」
わたしはそう、聞こえるように喋った。
《さぁ、そろそろ到着するがどうするか。いきなり奴の目の前に降り立つこともできるのだがな》
どうしよっか。
そもそも魔力を隠蔽できるってどういう事? 知性があるのなら話し合いでなんとかならないかな。
……ほんとノープランだよねアリシアは。あたって砕けろじゃないけど少しは作戦とか考えないとみんなが危険な目に会うかもなんだよ?
うう、でも……。
「目の前に降りて下さい。どうせこちらの事は把握されているでしょう。コルネリアの無事を確認するのが大事ですしね」
「レヴィアさんも居るんだし、問答無用でって感じにはならないような気がするよね。こちらにはサーラ様も居るし。最初から防御壁全開でいけばそうそう後れもとらないでしょうし」
ほら、みんなだって。
……みんなのはもっと色々考えた結果だと思うよ? アリシアと違って。
うきゅう。わたしだって、考えてるもん……。
……あはは。いじめてごめん。でも、アリシアのは考える前に感じてる方が多いからさ。
うう、それは否定しないけどー……。
《では、降りるぞ。グリフォンもこちらを見ているしな》
ばさっと羽をひとはばたきしてレヴィアさん地面に降り立った。
わたしたちもそのまま背中から飛び降りる。
目の前に、魔獣グリフォン。その足元に気絶しているらしいコルネリアが居た。




